熊本の球磨焼酎
球磨焼酎と料理をあわせる
球磨焼酎には米を原料にして米麹で仕込んでいるにもかかわらず、タイプが色々あります。これらの焼酎を料理にあわせるとしたら、例えば、スタートに「松の泉」の華やかな印象の香りを味わってから、天ぷらお椀盛りのような味のふくよかなタイプの料理と「温泉夢」を、ちょっと油の多い黒ムツみたいな魚の焼き物と「六調子特吟」を。
天ぷらよりもちょっとカリッと香ばしく揚げたものと、ちょっと氷を入れて割り水をした「文蔵10年もの」
を、そして少し濃いめの味付けをした煮物と「大石特別限定酒」 を味わう。ここでピックアップしたものは、このような流れでバリエーションを楽しめると思います。


◆六調子 特吟(六調子酒造)テイスティング・ノート
最初に、常圧特有の油の香りがします。藁の蒸れたような、根菜類の蒸れたような香りと、土のような香りがかなりはっきりと感じられて、あとはわずかにスパイスのような香り、栗の薄皮のような麹の香りが感じられます。
味わいは、口の含むとパンの酵母のような香りが広がります。アルコール度数が35度あるため、全体の広がりが強く、ボリューム感もあります。アフターで、少しスパイシーな苦味が全体を引き締め、辛口の印象を与えます。
◆松の泉(松の泉酒造)テイスティング・ノート
外観は透明で、香りは、減圧蒸留らしく非常に華やかでさわやか。お花と少しバナナのような香りが主体で、あとはミネラルの香り。清涼感のあるきれいな香りです。
味わいはまろやか、なめらか、バランスがとれています。アフターに、少しサラサラした粉のような苦味がありますが、これも溶け込んでいるので、非常になめらかな印象。余韻にほのかなバニラっぽさと、少しスパイシーさを感じます。
◆温泉夢(大和一酒造)テイスティング・ノート
香りは、実際に温泉水によるものかはわかりませんが、硬い鉱物のようなミネラル質の香りがします。それを膨らませるスパイスのような香りもあって、かなりシャープな印象。全体的に硬い金属のようなミネラルの香りが主体となっています。
また、ほんのわずか針葉樹の葉っぱのような香りがありますが、これは本醸造の日本酒の香りに少し似ている気がします。味わいは、最初から最後までかなり辛口な印象。すごくドライです。

◆太鼓判 黒ラベル(東肥醸造)テイスティング・ノート
ほんのり華やかなお花のような香り、麹からくる栗の薄皮の香り、根菜類の蒸れたようなミネラルの香り、ヨーグルトみたいなミルキーな香りのバランスが良く調和していて、日本酒の山廃純米のような印象。
味わいも非常にまろやか、なめらか。アフターにほんのりヨーグルトのようなミルキーな香りが広がって、さわやかな辛口の印象が残ります。

◆大石 特別限定酒(大石酒造)テイスティング・ノート
シェリー樽とコニャック樽で3〜5年熟成させたものをブレンドしています。色は、グレイがかった輝きのある黄金色。コニャック樽を使用しているためかわかりませんが、最初に若いコニャックのような香りがします。米焼酎特有の香りというのはほとんどわかりません。わずかにチェリーや干しプラムのような香り、スパイスの香り、バニラ香、ロースト香、栗とか胡桃とかのナッツの香りがします。
味わいもまろやかで、バランスが良く、余韻も非常になめらかな印象。香りが比較的はっきりとしていて、味のバランスもとれているところがなかなか面白い。他とは違うタイプです。
◆文蔵 10年もの(木下醸造所)テイスティング・ノート
クラシックなつくり方をしています。香りは、揮発性の強さを感じます。最初に、お米が蒸れたような香り、ほんのわずか白いマッシュルームのようなキノコの香りがします。伝統的な油の香りと熟成香です。口に含むと熱を感じるような広がりがありますが、これはアルコール度数の高さによるもの。
口の粘膜を乾かすような苦味があり、最終的にはちょっとドライな印象。アフターフレーバーもキノコや白い土っぽい香りが長く続きます。
*掲載写真とボトルデザインが異なります。

熊本の球磨焼酎をもっと知りたかったら・・・

このページは「焼酎ファイト!」の主旨をご理解頂き、田崎真也さん及び出版者のご許可を得て、「本格焼酎を愉しむ」(光文社新書)から転載しています。

田崎真也さんのプロフィール
1958年東京生まれ。
83年日本で開催された「第3回全国ソムリエ最高技術賞コンクール」(フランス食品振興会主催)で第1位。
87年「ホテル西洋銀座」にシェフソムリエとして入社。
95年「第8回世界最優秀ソムリエコンクール」で日本人として初めて優勝。世界一の座につく。

著書には、田崎真也が選ぶ毎日呑むワイン(新星出版社) 、ソムリエのひらめき(河出書房新社)、ワインは自分流が楽しい(講談社)、田崎真也のサービスの極意(大和出版)など。

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