人も野鳥も地球の仲間

人間が中心の世界は、野鳥たちにとってはいろんな危険でいっぱいです。森林伐採(ばっさい)や交通事故、環境汚染や薬害による野鳥の大量死が報告され、ゾッとさせられたこともありました。危ないのは野鳥ばかりではありませんね。自然の中にあっては、人間もまた同じように危険にさらされています。

野生の暮らしを守ることは、そのまま私たち人間を守ることになり、未来の子供たちを守ることにもつながります。これからは人もまた自然の一部なのだということを忘れずに、「人が自然を支配」するのではなく、「あらゆる生きものと共に自然の豊かさを分け合って生きる方法」をみつけながら、野生の生きものたちのジャマをしないように考えて行動していきたいものですね。

でも、中にはめずらしい野鳥を密猟(みつりょう)する人や喜こんでそれを買う人もいます。一方、保護されて増えすぎた野鳥たちが、お百姓さんが苦労して育てた作物を食べつくす「鳥害(ちょうがい)」も問題になっています。人と野鳥たちがほんとうに仲良く暮らしていくためには、まだまだたくさんの問題がありますが、まずは自分にできることからはじめましょう。

私たちのちょっとした心がけが、美しい自然や野生の生きものたちの安全につながります。一人一人のちいさな力がたくさん集まれば、それはいつかきっと地球を変えるほどの力になるでしょう。そしていつか、人と動物がいつでもおしゃべりできるような世界になるかもしれません。夢のような話ですが、もしも実現したら……とっても楽しい世界でしょうね。

■ 保護してあげるときにはいろんな注意が必要です→保護する時の注意点
■ このページに書かれているようなケガや事故、保護したヒナの対処法などの具体的な処置についてはレスキュー&育て方へどうぞ
■ 困っている野鳥をみつけた時は県の保護担当の窓口(県によって担当する課の名前がちがう)や保護施設に連絡して、どうしてあげたらいいか相談しましょう。ただし、県によっては素早く対応できないところもありますし、休日や時間外の場合もありますから、そういう場合は動物園や動物病院をさがしてお願いしてみましょう。電話やメールでの救護相談をしてくださる病院もありますから、利用しましょう。これらの連絡先を調べるには左メニューの保護施設・病院リストへどうぞ。

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野鳥の巣や卵にはさわらないでね!

野鳥の巣をいじったり野鳥の卵をもって帰ったりする人がたまにいます。めずらしいものだし、鳥の巣は大発見でしょう。ちいさな卵や雛(ヒナ)にさわってみたい気持ちはよくわかりますが、野鳥たちが何日もかけて必死で作っただいじな巣です。卵はじきにかえってかわいい雛(ヒナ)になりますが、人間があたためてもめったにふ化しません。また、卵は呼吸をしていますから、人が素手でさわりすぎると卵の中のヒナは死んでしまいます。ちいさな命を守るために、巣にはさわらないようにしましょう。

もしも、うっかり素手で卵や雛(ヒナ)にさわったからといっても、すぐにその場所をはなれれば、ほとんどの場合、子育ては続くようです。いつまでも巣の近くにいると親鳥たちがこわがって巣に戻ることができません。そうすると巣の中にある卵がふ化しなくなったり、巣の中の雛(ヒナ)がお腹をすかせて死んでしまうことになります。親鳥はエサを捕りに行っていたり、人が近寄ったので逃げただけのことですから、人がいなくなれば戻って来ます。心配な時はずっと遠く離れた物陰から、こっそり見守ってあげましょう。

悲しいことに、じゃまだから、汚いから、うるさいからと野鳥の巣を取り払ってしまう大人もいます。卵や雛(ヒナ)をとることも、中に卵があったり雛(ヒナ)がいる巣を取り去ることも、じつは鳥獣保護法(ちょうじゅうほごほう)という法律で禁止されています。

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ちょっとした溝や穴

道ばたの浅い溝(みぞ)や道路の側溝(そっこう)、ちょっとしたちいさな穴の中に野鳥のヒナがいることがあります。人間を見てびっくりして、動かずにじっとしていることが多いけれど、巣立ったばかりでそういう場所に落っこちてしまったヒナたちは、じつそこから抜け出せなくて困っていることが多いものです。人にとっては浅い溝や穴でも、まだ上手に飛べないヒナたちにとってはとっても深くてこわい場所なのです。

もしもそんなヒナをみつけたら、そこから出してあげて、その場所の近くのできるだけ車や人が通らないところに置いてあげましょう。親鳥たちはいつも迷子になったヒナたちを探していますから、みつけた時にすぐにヒナの近くに来れるように、できるだけ早くその場を離れましょう。人が近くにいると、親鳥たちはヒナに近づくことができません。心配だったら、遠く離れた場所から静かに見守ってあげましょう。

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ヒモや空き缶の危険

人間にとっては便利なビニールのヒモ、荷づくり用のヒモや家でなにげなく使うヒモ、強いタコ糸なんかもありますね。こんなヒモを一生けんめい巣に運ぶ鳥を見かけます。巣の材料にしようとしているのです。でも、なかなか切れないビニールのヒモは雛(ヒナ)が足をからませて動けなくなったり、爪がひっかかって足や指が折れたりする事故につながっています。足にからまったビニールひもが木の枝に巻きついて、動けないまま動物におそわれる鳥もいます。でも、鳥たちはそんな危険を知らず、せっせとヒモを運んでいます。

他にも、ビニール袋を引きずった鳥、さびてしまった空き缶でケガをした鳥もいます。人間が作ったゴミは、鳥たちにとって思いがけない危険なものなのです。ちゃんとゴミ捨て場に捨てたからと思っていても、猫や犬、カラスがゴミを散らすこともよくあります。自然の中に自然でないものが残らないように、一人一人がゴミを持ち帰るなどして自分のゴミに責任をもちましょう。また、みつけた時にはひろって捨てるようにしましょうね。

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釣り針やテグス(釣り糸)の危険

野鳥にとって、水辺は食べものをさがしたり水を飲んだり、水浴びをしたりする生活の場所です。その水辺で、私たちは釣りを楽しみます。釣った魚を近くによってくる鳥にわけてあげるほほえましい光景も見られます。でも、人が釣りに使って、そのまま捨てていく釣り針やテグスは野鳥たちにとってはとてもあぶないものだということを知っておきましょう。海辺や河原などに残された釣り針やテグスが多くの野鳥たちを苦しめています。

テグスは細いけれどとても強くて、鳥たちがつついて切れるものではありません。テグスがクチバシにからまって食べることができなくなった鳥、翼にからまって飛べなくなった鳥がたくさんいます。足にからまると血が流れなくなり、あばれるとあばれるだけしまって指や足が切れて動けなくなってしまいます。そして、だんだんと体が弱り、死んでいきます。釣り針も同じように野鳥たちを傷つけ、釣り針をのみこんで死んでいく野鳥もいるのです。もちろん、つり針の危険は人間にとっても同じです。

釣りをしていると、時にはどうしてもテグスがみつからないこともあります。こんな時のためにバクテリアなどによって数ヶ月で分解される素材のテグスもできました。嬉しい新製品です。多くのか釣り人に使って欲しいものです。

でも、テグスがからまったまま数ヶ月も生きられる鳥はほとんどいません。いちばん大切なのは、やはり「捨てない」ことですね。釣り針やテグスをひろったら自分もケガをしないように持ち帰って、きちんと分別して捨てましょう。

・関連情報リンク
■ 野鳥被害の実態:野鳥を守る会(ホーム)
釣り針やテグスで思いもよらない被害を受けている鳥たちの写真があります。野鳥のつかまえ方、釣り針のはずし方は参考になります。
■ 釣り針を飲み込んでしまったウミネコの話:キョロパパさん(ホーム)
釣り針をのみ込み、釣り糸で電線にからまってしまったウミネコは、キョロパパさんのおかげで元気に空に戻っていきました。かわいそうなハシボソガラスのお話もあります。

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粘着材やトリモチの危険

クラブの掲示板にゴキブリホイホイやネズミホイホイにからまって動けなくなっていた野鳥のレポートが届いています。ホイホイは粘着力が強いので、逃げようともがくうちにさらにあちこちにくっついてしまい、時間がたつほど足や翼が折れる危険も多くなります。ガムテープが羽にくっついて飛べなくなっているケースも多いようです。巣立ったばかりのヒナは、あやまって倉庫などに入り込んでしまうことがよくありますから、気をつけてあげたいものですね。

トリモチによる野鳥の捕獲も問題となっていますが、捕獲するつもりなどなくても、自然の中に置き忘れられたトリモチやガムテープは野鳥たちにとっては危険なものです。必ず持ち帰るようにしましょう。

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ガラスの危険を教えよう

鳥はとても目の良い生きものですが、森や公園などみどりが多い場所に近い建物では、ガラスにぶつかってケガをしたり命を落とす野鳥がたくさんいます。それは、ガラスが鏡のように森や公園を映すからなのです。そして、もちろん透明ですから、通りぬけられると思ってしまうのです。きれいにみがかれたガラスは、人間でもぶつかってしまうことがありますよね。もともと自然界にないガラスというもの、これは鳥たちにとって理解しにくいものなのです。

鳥がガラスにぶつかるのを防ぐために“バードセーバー”という大型の鳥類の形をしたシールが売られています。でも、絵の上手下手には関係なく、そこが危険な場所だと鳥に知らせれば良いのですから、がんばって自分で作ってみるのはどうでしょう?ここは危険だよ!……と、鳥たちに教えてあげましょう。

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山道や田舎道での被害

車による野鳥の事故が増えています。野鳥の交通事故は、いつも交通量の多い道路よりも、住宅が多い町並みや広い公園の近くの道路で起きることが多いそうです。野鳥たちが暮らす環境に近い場所では気をつけたいものですね。

車が通ることが少ない山の中の道路やたくさんの木々に囲まれた田舎の道ではとくに注意が必要です。あまり車になれていない鳥が多いばかりでなく、木々に囲まれた路上もやはり野鳥たちの生活の場所なのです。

木から道に落ちた木の実は風や車に吹き寄せられて道端にたまります。ここは野鳥たちにとって便利な餌場になります。雨上がりには道路のくぼみにたまった雨水を飲んだり、水浴びをしている姿もよく見かけます。お天気の日にはあたたかいアスファルトの上で砂浴びを楽しんでいます。急なカーブを曲ったら、近くの野原の巣に餌を運ぶキジがのんびり横断していたなんてこともありました。

見晴しがよく、敵の接近も見張りやすく、しかも車がめったに通らないとなれば、道路でさえも野鳥たちには快適な場所なのでしょう。とくに春先には、巣立ったばかりの雛(ヒナ)たちが夢中で餌をつついていることが多く、車の怖さもまだ知らないのか、近寄っても逃げることもせずきょとんと見ていることもあります。自然に囲まれた道路を車で走る時には、このことを思い出してくださいね。

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困った場所に野鳥の巣?

中に卵があったり雛(ヒナ)がいる巣を取りさることは鳥獣保護法(ちょうじゅうほごほう)という法律で禁止されていますが、玄関先の軒下、屋根裏、雨戸の戸袋、換気扇や空調機の室外機の中などでスズメの巣が見つかることも増えていますし、セキレイが車のエンジンルームの中に巣を作るなど、とんでもないところに巣を作って人を困らせたり、鳥にとっても人にとっても危険なところに巣を作ったりするケースもあります。

また、工事現場などでは「建物を撤去しようとしたら野鳥の巣があった」というケースも多く、解体業者の方はよくこんなケースに出くわすようです。住宅の増改築や建物の撤去の際にやむを得ず巣を移動させる必要があるケースもありますね。そんな時は以下の状況に応じて対処しましょう。

巣の移動や設置場所については巣の状態によって方法が変わりますので、レスキュー&育て方簡易巣の作り方と取り付け方もお読みください。

・繁殖期ではない場合(卵がない、ヒナがいない)
空の巣を取りさることに問題はありません。 翌年も同じ場所に巣を作ろうとしますから、巣を作られては困る場合には、繁殖期に入る前に巣のあとがわからないくらいきれいに取り去って、また巣を作らないように工夫をしましょう。

・繁殖期の場合(卵がある、ヒナがいる)
巣を取りさることは法律に違反することになります。卵の場合には一ヶ月弱、ヒナの場合は巣立までにおよそ二週間の飼育期間が必要です。できれば巣立つまで待ってあげてほしいものですが、どうしても支障がある場合には巣を別の場所に移すという方法もありますので、まずは県の担当部署に連絡して詳しい状況を説明し、許可をいただいてくださいね。(連絡先を調べるには保護施設・病院リストへどうぞ)

卵のある巣を移動した場合、親鳥が巣を見放すことも多いですが、あきらめてもすぐに次の繁殖行動に移ります。ヒナのいる巣を移動した場合、よほどひどい状況にならない限り子育ては続きます。

工事が始まる前に親鳥がそれぞれのヒナの居場所を確認できていれば、少々の騒音等は乗り越えてくれると思います。ただし、細かいホコリなどはヒナの健康に影響すると思われますので、気を付けてあげてください。

■ 工事などで巣を移動する場合の注意点
すぐ近くへの設置が難しい、近くでは細かいホコリや強い臭いなどがよけられないという場合は、いったん近めのところで親鳥に確認させて(エサを運んでいることを確認する)から、さらに次の場所へ移して設置するという風に、親鳥を誘導する形で遠ざけていくと良いでしょう。

■ 複数の巣を移動させる場合の注意点
親鳥たちは自分の卵やヒナしか面倒を見ませんし、他のヒナや卵には危害を加える怖れもあります。隣り合った巣の親鳥たちが子育て期間中にもめ事を起こすケースもよく見かけます。ですから複数ある巣を移動する場合には、巣ごとに卵やヒナが入れ代わらないように注意が必要です。また、新しい巣はそれぞれに間隔をとってあげると良いですね。

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鳥類標識調査(バンディング)は安全?

鳥類標識調査(ちょうるいひょうしきちょうさ)とは、野鳥に足輪をつけて、この足環を目印に鳥に関するいろんなことを研究する調査のことです。この調査によって、鳥がどこからどこへ移動しているのか、どんな場所に立ち寄っているのか、どのくらい長く生きることができるのか・・・などということを調べることができます。

この調査は環境省(かんきょうしょう)が山階鳥類研究所(やましなちょうるいけんきゅうしょ)という鳥の研究所に頼んで、「バンダー」という資格を持ったボランティアの調査員が調査を行なっています。

でも、足輪はほんとうに野鳥にとって危険ではないのでしょうか?

足環は木の枝などにも引っかかりやすそうだし、野鳥の細い足は折れてしまいそうです。そこで、一部の問題ある鳥類標識調査(バンディング)を考え直そうという運動が起こり、「バンディング問題」と呼ばれています。2005年から始まったこの運動のおかげで、だんだんいろんな問題点がわかってきました。そしてようやく環境省や山階鳥類研究所もバンディングに問題があることを認めてくれました。

でも、本当に問題を解決していくには、まだまだ長い時間がかかります。また、問題を解決していくには、たくさんの人の協力も必要です。以下のサイトにバンディングについての様々な情報がありますから、ぜひ読んでみて、バンディングについて考えてみましょう。

・関連情報リンク
■ 「バンディング」って、なに?(バンディング問題を考える、入口):MAKIさん
■ バンディング調査のこと(知って欲しい野鳥のこと):中島さん
■ Goichi's Birds(わたしのバンディング問題」):和田剛一さん

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