レスキュー&育て方

保護する時の注意点

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ケガや病気で弱った野鳥は動物病院や保護センター、動物園などで積極的に診察(しんさつ)してくれます。でも、その野鳥が回復して野生に戻ることができるようになるまでの間、あずかって育ててくれるかどうかは、県によって施設や病院によってちがいます。回復するまでの間、専門の施設や病院であずかってくれる県もあれば、保護した人にあずかってほしいと言われる場合もありますし、保護した後に里親をさがしてくれる県もあります。

ですから、保護する前に県の野生動物などの担当の窓口に連絡して相談しておいた方が良いでしょう。自分で保護する必要がある場合にはいろいろと注意が必要ですから、このページ全体をしっかり読んでおきましょう。また、自分では育てられないからと保護をしなくても、これは決して悪いことではありません


・すばやくつかまえることが大事です
ケガなどがある場合、よほど弱っていなければそうした状況から逃れようと野鳥たちは暴れますし、人が保護しようとすると人がこわくてさらに暴れます。人が翼や尾羽や足を持った状態で野鳥が暴れると、羽が抜けたり骨折したりとかえってケガがひどくなることもあります。ですから、どうしても保護が必要な場合はすばやく、できるだけ野鳥をおどかさないようにつかまえてあげなければなりません。中には、恐怖心だけで死んでしまう鳥もいます。また、弱っているからといって油断はできません。以下のことを覚えておきましょう。もっと詳しく知りたい方は野鳥の保定についてへどうぞ。

■ 小型の野鳥の場合
翼をたたんだ状態で、上からそっと胴体部分をつかみます。小型の鳥の身体はとてもデリケートで、強くにぎってしまうと内臓を圧迫して、それだけで死んでしまうことがあります。クチバシが固くとがっているので、指や身体や目をつつかれると大ケガをします。ちいさくてかわいい顔をしていますが、野鳥には気の荒い性格の方が多いことを覚えておきましょう。人をこわがらない雛(ヒナ)でも、人の目がキラキラしているのに興味を持って目をつつくこともありますので、気をつけましょう。念のために手袋やティッシュ、ハンカチなどを使うといいですね。

■ 大型野鳥の場合
大型の野鳥の保護にはとくに注意が必要です。水鳥など魚を主食にする鳥のクチバシは鋭く危険です。中にはいつもは首をちぢめていて、エサをとる時や攻撃する時に素早く、びっくりするほど長く首をのばす鳥などもいますから、ふいに突つかれないように気をつけましょう。フクロウやタカなどの猛禽類(もうきんるい)はクチバシよりも鋭い爪に注意が必要です。爪はかなり汚れていることが多く、この爪でケガをするとばい菌感染しますので、素手では絶対にさわらず、できるだけ専門家にまかせましょう!


・怖がって逃げ回る場合
逃げ回ることでケガがひどくなることがあるので、ケガをした野鳥のためには追いかけない方が安全です。保護が必要だと思われる場合はむりやりつかまえようとせず、県の窓口に連絡して専門家の手にまかせましょう。


・ケガをして血が出ている場合
血には素手でさわらないようにしましょう。そんなに神経質になることはありませんが、野生の生きものは内・外部寄生虫やなんらかの病原菌を持っているものですから、用心にこしたことはありませんね。


・人間がさわると親が世話をしない?
昔からこう言われてきましたが、鳥の鼻はそれほど発達していないようです。ヒナをさわられるのを見ている親鳥でも、心配はするものの人が離れるとすぐにヒナのそばにやってきて世話をつづけます。すずめっ子クラブには人がさわったあとにでも親鳥もどせたというたくさんのレポートが届いています。よほど香りの強い香水や整髪料など使っていないかぎり、素手でさわってしまっても親鳥はちゃんと世話をつづけます。


・動物病院でチェックを受けましょう
保護されるような状態にある野鳥は、元気そうに見えてもなんらかの菌に感染しているケースもあります。もし家庭でしばらく保護する必要がある場合には、保護野鳥のためにも里親さんのためにも、かならず動物病院で「糞検査」や「そのう検査」を受けましょう。これらの検査は保護野鳥の健康を管理する上でのバロメーターになりますし、表面ではわからない病気が発見されるケースはとても多いものです。
また、たまにダニなどの外部寄生虫が寄生していることもありますので、これも調べてもらいましょう。ダニなど寄生虫がいれば痒がるしぐさをしますのでわかりやすいものですが、乳幼児のいるご家庭やアレルギーのあるご家族がいる場合はとくに気をつけましょう。


・施設や動物病院をさがしたり、移動するのに時間がかかりそうな場合
弱った野鳥のためには栄養補給と保温が効果的です。新鮮な水を人肌よりちょっと熱めにあたためて、クチバシのはしっこにちょこっとつけます。小鳥なら1〜2数滴あたえましょう。それから、手近にあるもので保温してあげます。外ならばあたたかい缶コーヒーとお菓子の箱など利用して、やけどをしたり熱すぎたりしないように保温してあげましょう。

よく手のひらでつつんで温めようとする人がいますが、人の手で温めるのはかわいそうなことです。鳥の体温は40度以上ありますが、人の体温は25〜6度ですから、逆に人の手が鳥の体温をうばってしまうことになります。気をつけましょう。もっと詳しく知りたい方は左メニューの赤枠内すぐに救急処置をしよう!のコーナーを読んでみましょう。


・野鳥を家庭で飼うことは『鳥獣保護法』という法律で禁止されています
野鳥を家庭で飼うことは『鳥獣保護法*』という法律で禁止されています。ペットとして飼うことはもちろん、元気になるまで短い間保護して育てることも、きびしく言えば法律違反になります。「助けているのに?」と思うかもしれませんが、こうした法律がなければ、野生鳥獣の乱獲(らんかく)や密売*(みつばい)をなくすことができません。かわいいから、きれいだからとつかまえてペットにする人もふえてくるでしょう。野鳥たちはこの法律によって守られているのです。

事故や病気などが原因で、自分の力だけでは生きていけない野生の生き物は多いものです。一般人がこういう野生の生き物を保護して育てる必要がある場合、県の担当の係に届けなければなりません。そして、保護飼育*(ほごしいく)の許可が下りれば役所から『飼育許可証*』をもらえます。ですが、これは届ければもらえるというものではありません。最近は、保護してあげないと生きていけない野鳥を保護している人でも、なかなかもらえないそうです。どうしてそうなったのでしょう?

理由はたくさんあるようですが、誤認保護*(ごにんほご)がとても増えてきているのも理由のひとつでしょう。保護をしなければそのまま自然の中で元気に育っていたと思われる野鳥のヒナを、まちがって保護する人がとても多いのです。また、獣医さんによると、人が育てることによっておきる栄養不足や運動不足がもとで野生にもどれなくなっているケースも多いのだそうです。これからは『飼育許可証』がないと診察してくださらない獣医さんも増えてくることでしょう。本当に保護を必要としている野鳥たちが正々堂々と保護を受けられるように、まちがった保護をへらしていくことがとても大事なことだと思うこのごろです。

*鳥獣保護法(ちょうじゅうほごほう):鳥をまもるための日本の法律
*乱獲や密売(らんかくやみつばい) :自然のことを考えずにたくさんの野鳥をこっそりつかまえたり、こっそり売ること
*保護飼育(ほごしいく)      :保護して育ててあげること
*飼育許可証(しいくきょかしょう) :保護して育てることを国がみとめたときに発行される証書。毎年更新しなければならない
*誤認保護(ごにんほご)      :保護しなくてもよいヒナをまちがって保護すること

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