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我輩はグッチである


“グッチと子供たち”

 

子連れで大冒険!

グッチの独り言

たくさんの荷物と一緒に知らない家の一部屋に閉じ込められた。くんくん匂いを嗅いでいるとドアが開いて、その隙間からやんちゃ盛りの子猫たちがちょろりと部屋の外へ。追って行くとたくさんの人間の足の間を抜けて、今度はそのまた外へと飛び出した。ゴエモンさんと私はすぐに追いかけた。
いくつも斜めの道やまっすぐな道を通って、子供たちが入っていった知らない部屋へ。すると知らない人間がきいきい声で棒を振り回してきて、ゴエモンさんは外へ逃げ、逃げ遅れた私は子猫と一緒に箪笥の後ろに逃げ込んだ。
RITZの声が聞こえてきて、必死に返事をするけれど、たくさんの人の声、足音、私たちを呼ぶ声、怒鳴る声。外ではさっきの人間のキイキイ声と、初めて聞くゴエモンさんの大きなうなり声……。怖いよ〜、助けて〜。

あの時はとっても怖かったけど、新しい家にはすぐに慣れた。前よりずっと広くて、ヒモ付きだけど外の廊下で遊んだり、涼んだりすることもできるようになった。時々大きな動く箱が開いたり閉じたり、あれだけはちょっと怖かった。

RITZの独り言

やっと太ってきたな…と思っていたら、突然可愛い赤ん坊がぽろぽろと生まれて唖然!
グッチは神経質な程に子育てをし、立派なお母さんぶり。ゴエモンはそんなグッチをいたわって、子猫にミルクを飲ませているグッチをていねいに舐めたり、グッチがご飯を食べ終わるまでジッと見ていたりしていた。
グッチは二度、四匹づつの子供を生んだ。二度めに生まれたうちの一匹はひどく弱っていたが、徹夜の看病のあと元気になった。なのに、五日目の夜、冷たくなっていた。運命という字面が頭の中に貼り付いて残った。
二度めの子猫が生まれて間もなく、今度は私が結婚。親子六匹を引き連れての引っ越しの最中に子猫たちが脱走し、マンション中を巻き込んでの大騒ぎとなった。お陰であっという間に有名人。「猫と一緒にお嫁入りなさった方ね!」と、冷や汗ものだった。
猫に入り込まれてヒステリーを起こしたおばぁちゃんに掃除機ホースで何度も叩かれて、ゴエモンが負傷。ゴエモンが人に向かって牙を見せたのはあれが最初で、最後のことだった。


グッチとゴエモンの子供たち

グッチは二度の出産とも五匹の子猫を生んだ。そして二度とも、真っ黒のペルシャ風が二匹、リスのような黒くて太い縦縞のアメショー風が二匹、そして地味で弱いきじ猫が一匹という割り当てだった。
写真は“ガープ”。
二度めに生まれた中でも一番の食いしん坊で、暴れん坊。ガープが貰われて行った辺りでは、のちに太い縦縞の猫がわんさかと増えたらしい。

グッチとゴエモンの子供たちは美ニャン揃いだった。いや、決して里親の欲目ではない。最初の子猫たちは里親を探し始めるとすぐに貰いてが見つかり、二度めの子猫たちには予約が入るほどの人気ぶりだった。
ポストカードの右手前はモデル時代の“チビ”。
名前の割には体長50cm、尻尾が25cmという巨大猫に育った。が、写真でもわかるようにやたらと気が小さい。 運悪くもらわれていった先で育てられなくなったと保険所にまで連れて行かれそうになったが、運良く猫好きの友人夫婦に引き取られ、とても大事にされた。
猫の栄養管理、健康管理には気を使ってくれる友人夫婦だったが、引き取った時点で肥満はすでにチビの身体を蝕んでいた。ならば好きにさせよう……向いの肉屋、隣の魚屋のご主人にも可愛がられ、幸せ太りのままチビは天国に行った。
彼らの本当の幸せを考えるなら、飽食は絶対に避けさせるべきだとつくづく思う。甘やかすことと愛することとは違うものなのだ。


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