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我輩はグッチである


だが、写真は私ではない。私の子。“ガープ”
ちょうど眼が開いたばかり。RITZと出会った頃の私によく似ているらしい

 

クリスマスの奇跡

グッチの独り言

寒くて暗い時、兄弟姉妹と一緒に遠く遠く運ばれて、知らない匂いのところに置かれて、みんなで一緒に鳴いても、鳴いても、お母さんは来てくれない。
白い冷たいものがふわふわ落ちてきて、寒くて、怖くて、おっぱいが欲しくて、一生懸命呼んだけど、やっぱりお母さんは来てくれない……。

急に大きなものがにゅーっと出てきて、お母さんとは違うなにか怖いものが体をつかんだ。足が地面につかない。知らない匂いがする。怖くて怖くて、思いっきり噛み付いて、思いきり引っ掻いてやったけど、すぐに眠ってしまった。

RITZの独り言

'80年、久々の雪のクリスマス・イヴの深夜、近所で子猫が鳴いている。「イヴに捨て猫…?まさかね。」と思いながらも、あまりの寒さが気になって外に出てみた。弱い鳴き声が途絶えがちだ。
洒落にもならない話。三味線の師匠の家の玄関の植え込みに捨て猫。四匹はすでに冷たくなっていて、一匹だけ生きていた。拾い上げようとすると、かなり激しく抵抗された。どうやら野良のようだ。
まさかとは思いながらも捨てられていた家の人に問ねたところ、返事もなく鼻先で戸を閉められた。眼が開きかけたばかりの子猫は懐に入れるとひんやり冷たくて、死んだように動かなくなった。
雪がだんだん激しくなるクリスマス・イヴ、私とグッチはこうして出会った。

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