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ちょんの字が行く
エピソード2

四苦八苦の介護の後、元気になったちょんの字は
飛ぶことを覚え、遊ぶ楽しみを知り
めいっぱいのやんちゃぶりで家中をかき回している。
でも、窓から外を眺める時は、首を傾げたり、伸ばしたりと、
まるで不思議なものでも見るような様子。
すずめたちがいる窓に近付くのもまだ怖いようだし
いつかすずめの世界に戻れる日が来るのだろうか……?
 

●7月1日(木)雲り時々雨 (9日め)
ちょんの字、牛を食う

今日は久々の晴れ間なので日光浴。水浴びの用意もしてみたが、近付こうともしない。午前中と午後には2回、二時間づつ飛行練習。まだまだの飛びっぷりで、短距離専門のようだが一生懸命。今日も練習の合間に、グッチの餌の残りを突ついていた。なんと、ビーフ……。すずめっ子、ついに牛を喰う!
ちょんの字は海側の低い窓辺で遊ぶのが気に入っている。私のお気に入りの猪口をいくつか並べてあるのだが、呼ぶと猪口の陰に隠れたりする。カゴに戻りたくないのだろう。テラスのすずめの団地も気になる様子だが、自分だけでは近付けないでいる。私がテラス側の窓に近付くと急いで飛んできて、私の肩や頭の上からすずめたちを見ている。怖いけれど興味はあるのだ。
すずめたちもちょんの字の事が気になる様子。一羽など、驚くほどすぐ傍まで来て、首を傾げながら覗いていた。もしかすると、ちょんの字の親かもしれない。いつか窓越しでなく遊んでくれたら、いつか彼らの世界に受け入れてくれたら、と願う。いよいよ難しい段階に入ったのかもしれない。すずめの学校に入れないちょんの字に、私は何を教えてあげられるのだろうか……。

カゴの中のちょんの字を見ていると面白い。思いっきり伸びをしたり、アクビをしたり、熱心に毛繕いをしたり。嘴が届かないところは細い針金のような足をキューッと伸ばして、器用に掻いているのには驚いた。まるで猫や犬と同じ。自分と同じような仕種をする小さなすずめがここにいる事を、グッチ婆さんはなにも知らない。のけ者にしているわけでもないのに、なんだかちょっと胸が痛む。

今夜からちょんの字の巣箱を取り払った。飛び始めたら、もぅ巣箱は使わないらしい。枝に止まって寝るなんて、熟睡できるのかと心配で深夜に覗いてみると、熟睡していた……。大人になったと、感動。

今日のちょんの字の御飯:
朝食:極上品めじろの餌蜂蜜味(耳かき山盛り7口)
昼食:アオムシ3cm×2、2cm×3、1cm×7(お隣から)
三時:網戸で捕まえた虫諸君
夕食:極上品めじろの餌(耳かき山盛り5口)とグッチ婆さんの缶詰横取り(ビーフ味)
夜食:残りご飯のお粥


●7月2日(金)豪雨 (10日め)
RITZとちょんの字のすずめの学校:Lesson 1、“自力で食べる”

夜更けから物凄い豪雨と風の音。家の中も暗くて、ちょんの字もあまり飛び回らずに私にまとわり付いている。飛べるようになるとあまりなつかなくなると聞いていたが、ちょんの字の場合、飛んでは私の頭や肩の上で休み、また飛んでは食べて甘え、眠たくなると手の中に潜り込むという繰り返し。ちょっと甘えん坊が過ぎるだろうか?
あまり練習にもならないようなので、今日からRITZとちょんの字のすずめの学校スタート。
Lesson 1は自力で餌を食べる勉強。この頃はちょっとお腹がいっぱいになると、生意気にも練り餌を突ついて食べる振りをするようになった。そこで、アワ、キビ、ヒエ等の混じった殻付きの餌をばらまいて、突ついて食べる練習をすることにした。初めはなかなか興味を示さなかったが、二時間後、ぼちぼちと突っつくようになった。嘴の中で器用に転がし、少し皮も剥けるようになったが、呑み込むまでは行かない。でも、まずまずの成果。鳥かごに置いた小松菜の葉っぱもちょこちょこ食べていた。

午後は勉強と思って外に出しっぱなし。そうしたら、夕方頃に鳥かごに入れた時には嫌だと大騒ぎ!大失敗。そんな騒動があっても、グッチ婆さんはまだなんにも気付かない。なにしろ、耳が遠いからな。


●7月3日(土)雲り時々晴れ (11日め)
思わぬ展開でLesson 2、“猫は恐い!”

一番の心配はグッチだった。それも襲う心配ではなく、猫は恐くないものと思わせる心配。すでにテラスのすずめの団地でもほとんど怖がられていない。グッチの方も以前にインコと遊んでいた(憶えてるかどうかは定かではない)ことがあった上に、歳をとって獲物を襲うという気力などまるでない。これまでは部屋を別にして接触させないようにはしていたが、一緒に住んでいるだけでも猫の匂いが染み付くのでは無いかと心配だった。ただでさえ人間の私にべったり状態なのに。グッチにまでべったりになってしまったら……リリースは絶望的だ。
そんな私の不安を他所に、今日、ついにちょんの字とグッチが接近遭遇。菊ちゃん(姑)が見てくれてるからと安心していたら、菊ちゃんは・・・微笑ましくそれを眺めていた(泣)。何も知らずに遊ぶ油断だらけのちょんの字を、やや後方からグッチ婆さんが「なんだ?」という顔で眺めていた。初めて見る猫にちょんの字は大騒ぎ。まぁ、“猫は恐い!”という教訓にはなったかもしれない。>教訓:人任せは厳禁!


●7月4日(日)久々に晴れ (12日め)
思わぬ第一歩!

鉢植えのパキラで遊んでいたちょんの字、ふと見ると自力で羽虫をとって食べようとしていた。嘴に引っ掛かっていたものの、これは輝かしい自立への第一歩に違いない!今日も一日元気に飛び回り、旺盛に餌を食べ、殻付き餌を投げ飛ばし(Lesson 1 は難行中)、あちらこちらとウンチくんを落としてまわる。私はひたすらそれを追い、小間使いのように働かされている。
それでもさんざん遊ばせるせいか、カゴに入れても静かになったので、私も時々は遊ばせてもらっている。今日は荒れ地の斜面にクリーピングタイム、アイビー3種を定植。こぼれ種から発芽して15cmくらいに育っていたセージを見つけ、これも移植した。久しぶりに庭を見てまわると、荒れ放題ながらもいろんな花が咲き始めていた。アメジストセージ、くちなし、朝顔も蕾を膨らませ、西洋人参木はたわわに花を咲かせていた。サイトに写真をアップしたいと思うが、デジカメは故障中。ちょんの字保護の日に、慌てていて一晩中雨の中に置き忘れていたのだった。まぁ、カメラがあっても時間はあまりないかも……。

昨日の遭遇以来、ずっと気にして見ているが、グッチ婆さんはちょんの字のことなどすっかり忘れてしまった様子。ひとまず、安心。


●7月5日(月)快晴 (13日め)
RITZとちょんの字のすずめの学校:Lesson 3、“何でも食べてみよう”

ひとまず安心、と思っていた昨夜、グッチ婆さんは私が風呂に入っている間にちょんの字のカゴに添い寝していた!タオルをかけていたのでちょんの字は気付かなかったらしく、遅めの餌にありついて無邪気に喜んでいた。
さぁ困った。今後は絶対隔離か……。グッチ婆さんがいつものようにきれいさっぱり忘れてくれることを願いたい。がしかし、恐かったことと面白いことは、なかなか忘れてくれない。グッチ婆さん、今日は持病の便秘で家中うろつきまわっている。

一方ちょんの字、朝と夜にはバクバク食べるが、昼間は遊ぶ方が優先で落ち着いて食べない。Lesson 1ははじめのうちだけ真面目に練習、後は殻付き餌を跳ね飛ばしたり、一度にたくさんくわえてまき散らしたりしている。短気なのか、妙な遊びを覚えてしまったのか……。やむなくLesson 3へ進む。
まずは網戸にいる小さな羽虫を食べる練習。ちょんの字を指先に乗せて羽虫のいる辺りへ運ぶ。次から次へと器用にゲット(網戸もきれいになってこれは便利!)。次はたまたま通りかかった不運な蜘蛛さん、私がちょいと弱らせてからちょんの字の足元に転がす。時間はかかったがなんとかゲット。ハエ、アリ、蚊、昆虫、蛾と次々に試し、小さなゲップのようなものが出てちょんの字満腹、RITZ満足。ちょんの字のお昼寝の間に菖蒲を植え替えた。
夜、明日のレッスンのために家中の灯をつけて、虫カゴを持って庭へ出る。もちろん、網戸を巡って餌探し。たくさんゲット。アオムシや鳥かごは左隣から、虫カゴはお隣のおチビちゃんから・・・ちょんの字、お前はたくさんの優しさに守られているんだぞ!と嬉しくなった。


●7月6日(火)快晴 (14日め)
ちょんの字活用法その1:網戸専用バキューム

今日は二階とお風呂の網戸の掃除。指先にちょんの字を乗せまして、ちっちゃな羽虫のいるところへ。ちょんの字は網戸の隙間から入り込んだ小さな羽虫をバックバックと小さな口で吸い込んで、あらあら不思議、網戸はすっかりきれい!跡形もなく器用にとってくれるので、これはほんとに便利。
巣から落ちたちょんの字を保護して今日で二週間。よく馴れて私の鳴き声(舌打ち音)にも返事をするようになり、手乗り、肩乗り、頭乗り。得に髪の毛が好きで、引っ張ったり頭を突っ込んだりして遊んでいる。背中ぶら下がりもなかなかお気に入りの様子。好奇心も旺盛で、早くもテリトリーを二階にまで広げてしまった。
困っているのはちょんの字の愛情表現。私を見るとぶるぶると全身を震わせて喜んでくれるのは嬉しいことだが、その後おとなしくなってジーッと私を見つめる。私もジーッと見ていると、いきなり目ん玉を突いてくる。だから、この頃は目を合わせないようにと思うが、可愛いのでつい覗き込んでしまう。体長は11cm、いまややんちゃ盛り。


●7月7日(水)快晴のち曇り一時雨 (15日め)
ひとまず独立…?

ちょんの字は誰も手の届かない高窓の桟を昼間の住処に決めた様子。昨日は窓の向こうでホバリングしながらちょんの字を見ているすずめがいた。以前にもしきりに近付いてくるすずめがいたし、親鳥なのかもしれない。いずれにせよ、他のすずめに慣れて良いことではないだろうかと思う。迷い込んだ虫をおやつにしてるので掃除にはなるが、問題はウンチくん・・・一長一短といったところか。この頃はウンチが小さくなったようだ。
今のところつかまえるのは簡単。お腹が空くと降りてくる。食べたいだけ食べると、もっと食べたい振りなどして私を欺き、その隙にさっと高窓へ戻る。やっぱりカゴの中は窮屈なのだろう。それにしてもなかなか賢いと感心している(里親の欲目?)。
甘えたい時、眠たい時にも降りてきて、手を広げろと私の指を突つく。私がしばらく姿を消して、戻って来た時にはピャーピャー鳴きながらすぐに降りてくる。夜は遊び疲れて眠たいらしく、自発的に投降してくる。
一方グッチ婆さん、時折思い出してちょんの字を探しているが、下しか見ないので見つけられないらしい。


●7月8日(木)快晴 (16日め)
キッスの嵐!

ちょんの字の目突きを嘆いていたら、ピピコPAPAからアドバイス。有効かどうかは不明というコメント付きだったけど、良さそうだったので(面白そうでもあった)早速試してみた。
いつものようにちょんの字がジーッと私を見つめている時に、しっかりと目を閉じて顔を近付けてみたら・・・猛烈熱烈なチクチクキッスがいきなり唇へ、目は、睫毛へ、頬へ、チョチョチョチョーン。叱ろうと思った時には逃げていた。飽きるまでですって?やっぱ、止めとこう……。
夜、ついにちょんの字は梁から降りて来ず、今、リビングの天井の梁で寝ている。淋しくないのかい? ・・・なんて、淋しいのは私だ。


●7月9日(金)晴れのち雨 (17日め)
やっぱり賢い!!!

昼過ぎから雨が降り出し、今日は仕事もないので一日オフィスでサイトの更新に没頭した。
ちょんの字は隣のリビングの高窓の桟で遊んでいたが、お腹が空くとオフィスから見えるあたりまで降りてきて、小さな頭を傾げながら私を呼んでいた。声だけで判別していると思っていたら、ちゃんと姿も覚えているらしい。オフィスはグッチ婆さんの根城でもあるので近付かず、グッチの姿が見えると隠れるし(頭かくしてなんとやらだが)、お腹が空くと呼びに来るあたり、やっぱり賢いのだと思う!
私がちょんの字の方を見るだけで全身をぶるぶる震わせて走り回るが、餌を食べ終わるとっとと高窓へ戻る。私はオフィスに戻る。これはなかなか良いパターンだ。だが、Lessonの方が全く進まないのが問題。陽が落ちる頃には疲れたのか、べたべたと甘えてきて離れない。一方、今日のグッチ婆さん、雨でお散歩にも行けず、オフィスでひたすら寝ていた。


●7月10日(土)雨 のち曇り(18日め)/れんげショウマ開花
そろそろ巣立ちの時期かも…

今朝はなぜか、いろんな種類の鳥が賑やかに鳴いていた。特にウグイスの競演は見事なもので、春先に一生懸命練習を繰り返していた下手っぴさん達だろうかと思うと嬉しくなった。蝶々もあちこちで追っ掛けっこをしているし、ハーブの葉陰では昆虫たちがいちゃいちゃ。自然界は恋の季節。
テラスの団地の雀たちも今朝はひときわ喧しく騒いでいて、そのせいかちょんの字も興奮気味。いつもなら一度に五、六口は食べる餌を今日は二口ほどしか食べず、食べるとまっすぐに高窓の桟へ飛んでいく。甘えもせず、Lessonもせず、私にも見向きもしないといった感じ。そろそろ巣立ちが近いのだろうか?
午後からずっとしとしとと雨なので、今日も一日サイトの更新をした。せっかく撮っていた写真、時期遅れで没にするのは惜しいとアップしたが、やはり時期遅れの感がある。デジカメー、早く帰っておいでー!
今日のグッチ婆さんは時々うなされたりしながら、一日中寝ていた。ちょんの字に餌を盗られる夢でも見ていたのかも。


●7月11日(日)雨(19日め)
甘えん坊、復活

私が朝寝坊をしたからお腹がぺこぺこだったせいだろうか、それとも雨で雀たちが静かな所為だろうか、ちょんの字は朝から甘えてばかりでそばを離れない。昨日さぼった網戸の掃除兼おやつの後、ひと遊び。寝室のカウチで、しゃがみ込んだままばたばた羽だけ動かしながらカウチの上を滑って遊ぶ。あたかも板のないソリ遊びのように。棉織りの感触が砂に似ていたのかも知れない。水浴び、砂浴びの場所には目もくれないのに……。
今日は落ち着いていて、Lessonの方も頑張っている。殻付き餌を少し食べることに成功して、美味しかったのか大興奮!でも、もどかしいのか、しばらくするとたくさんく頬張っては投げ散らす。

午後、殻付き餌のLessonには積極的に取り組んでいる。砂場にも初めて興味を持ったが砂を浴びるのではなく食べているのでちと心配。練り餌の方も、今日は凄い勢いで食べている。一日中自由にするようになってから、ずいぶんとエネルギーを使うのかもしれない。グッチ婆さんの方はいまいち食欲がないが、うなされずに熟睡。夏用ベッドの中で仰向け万歳ポーズで寝ている。いつものことながら情けない姿。


●7月12日(月)曇りのち晴れ(20日め)
初めて外へ!・・・思わぬ大冒険

開けた窓から吹き込んでくる強い風に、ちょんの字は怯えた様子。ビューッと吹きつける度に私の陰に逃げ込んでいた。しばらくすると少し慣れて、それでも床の上をほふく前進。なんだかグッチ婆さんと同じ。かのグッチ婆さん、風が強い日のお散歩は風を除けながらのほふく前進(無理!)で進んでみるが、諦めてすぐに帰ってくる。情けない猫ではある。考えてみると、ちょんの字はこんな強い風は初めて、雨にも濡れたことがない。温室育ち(ボディーガード付き)の雀にとって、自然は過酷なものだろうと心がもやもやする。。
午後、風も治まったので、雀のいない場所を選んで窓を開けてみた。眺めるばかりでひたすら私に身を寄せている。この様子なら大丈夫だろうと芝生の上に下りてみたら、しばらく脅えていたもののいきなり飛んだ。しまった。慌てた私はちょんの字を見失ってしまい、いつも返事をするようになっている舌打ち音や名前で呼んでも返事がない。どうしよう……としゃがみこんだら、足の傍にちょんの字。慌てて捕まえ室内へ。
少しづつでも外に慣らしていきたいと思ってのことだったが、今迷子になってしまったら生きていくのは無理だったろう。無謀な挑戦をしてしまったと大いに後悔した。部屋に戻ったちょんの字は何ごともなかったように殻付き餌に取り組み、着実に成果を上げている。私は大冒険に疲れ果て、がっくり。


●7月13日(火)曇りのち晴れ(21日め)
マズイ〜!

雀というのは晴れた日には活発で騒がしく、曇りの日はおとなしく、雨の日には沈黙しているような気がする。明らかにテラスの団地の雀たちの影響を受けているちょんの字、朝からおとなしく一羽カウチでソリ遊び。そのうちベッドの羽毛ふとんに飛び移り、今度はジャンプしてはパフッと沈み、またジャンプしてはパフッと沈みと、新しい遊びを見つけたようだ。
寝転がって見ていた私はついうとうと。気がつくとちょんの字が顎と首の間に潜り込んで寝ていた。初夏の心地よい昼下がり、なぁんにもしないでごろごろ……。足元ではもぞもぞ……?ん、まさか・・・と見ると、私の足元でグッチ婆さんもお昼寝に参加!? 本能で寝ている時もちょこちょこ眼を開けるちょんの字には見えていたはず。ん〜〜〜、マズイ状況になってきた。度重なる接近遭遇で、ちょんの字はだんだん大胆になっている。このままではちょんの字のちっちゃな脳みそは「猫とはトロイ生き物である」なんてインプットしてしまう。マズイ、と〜ってもマズイってば〜!


●7月14日(水)晴れ(22日め)
すずめの訪問

いつものようにでれでれと過ごす午前中、カウチで遊ぶちょんの字を眺めていると、窓の外の枕木の上に雀の成鳥がやってきた。私もちょんの字も固まったままジッと見ていると、雀は網戸にまで来てとまった。手を伸ばせば届く距離。雀はすぐにカウチと一体化していた私の存在に気付いて逃げたが、ちょんの親鳥だったのかもしれない。
先日、雀の学校というH.P.で、保護して育てた雀をご両親に預けて育ててもらい、数か月後に様子を見に行ったらしっかりと覚えていたという話を読んだばかり。これまでにちょんの字に接近してきた雀が同じ雀かどうかは分からないが、親鳥は自分の子がこの家の中にいることを知っているのかもしれない。だとすれば、リリースも上手く行くかも……。でも、まだグッチ婆さん問題が残っている。
それにしても雀の成鳥は大きかった。最近凛々しくなてきたなぁ〜などと思っていたちょんの字が、ちいさくちいさく見えた。


●7月15日(木)晴れ(23日め)
見つめ合う一羽と一匹…

今日は久しぶりの御馳走をお隣さんが届けてくれた。まるまる太った、この時期には貴重なアオムシ。なのに、ちょんの字は口を開けてはみるものの、嘴にアオムシが触れると逃げてしまう。ついこの前までは大好物だったのに……。もったいないぞぉ〜と思いながら足元に放ると逃げたり近寄ったりしながら、結局食べた。
そろそろ一人立ちが近いのかもしれない。餌もこの頃はつっ突いて食べることが多くなったし、殻付き餌もずいぶん食べれるようになった。高窓ではかなりの虫を食べている様子だし、網戸の掃除も欠かさない。親も覚えている可能性まで出てきて、リリースの可能性は膨らむばかり。問題は日毎にグッチ婆さんを怖がらなくなっていることだけ。グッチ婆さん、今日はいつの間にかちょんの字に接近しており、寝そべってちょんの字を眺めていた。見つめ合う一羽と一匹の距離は1m……。


●7月16……日(金)うす曇り(24日め)
良い運動

昨日からしばらくの間、我が家には小さなお客さん。年の頃はちょんの字と同じくらい、食べっぷり、食べ方まで似ている。よくさえずり、よく駆け回る。ちょんの字は少し興奮ぎみで、いつもの倍は飛び回っている。大変なのはグッチ婆さんも同じ。小さな子供は大の苦手で、逃げ場を求めて家中さまよっている。良い運動にはなりそうだ。(今は私も避難して、マックの前にいる……)


●7月18日(日)快晴(26日め)
豆台風、去る!

あちこちと休む暇無くつむじ風を巻き起こした豆台風の去った後に残されたものは……ご破れたパーマネントコレクションのクッションとテーブルの裏にこびり着いたご飯粒、家中にばらまかれた殻付き餌とこき使われてぼろぼろになった菊ちゃん(姑)。被害は甚大。一日中うとうとする私の傍を離れないちょんの字も寝てばかり。「引っ掻かかれるぞぉ〜」という私の一言でなんとか難を逃れたグッチ婆さんも、急に静かになった家の中で豆台風の消失の確認に余念がない。なんとなく、家中が痛み気味……


●7月21日(水)晴時々狐の嫁入り(29日め)
情けなくて怠惰で無気力な三日間……

を過ごしてしまった。ごろごろだらだらと本ばかり読んで。庭造りを始めてからというもの、病気でもこんな風に過ごしたことはなかった。私が四冊の本を読み上げる間中、ちょんの字は片時も私の傍を離れず、ここぞとばかりに甘えていた。
無気力の原因はそんなちょんの字の将来への迷い。危険がいっぱいで生き抜けるかどうかも解らないが、それでも自由に羽ばたける自然へ帰すか。あるいはガラス越しの広い外の世界に焦がれさせたまま、安全な家の中で育てていくか。まとわり付くちょんの字を見る度に選択を迫られているような気がしてならない。


●7月23日(金)暴風豪雨(31日め)
グッチ婆さん、御機嫌斜め

さぁ、気を取り直して頑張るぞぉ!と思ったものの雨続き。再び読書三昧。実は面白くて止められなかったりもしている。庭造りを始める前には、時間さえあれば音楽を聞きながら本を読んでいた。音楽は鍬を振り上げながらも聞けるが、本の方はほとんど睡眠薬代わりになっていた。雨降りに久しぶりにじっくり読もうという頃にはストーリーを忘れてたりして、ずいぶんとページを逆上らなければならなかった。考えてみれば贅沢な時間。もぅしばらく雨でも良いかも……。
読書の合間にちょんの字の雀の学校。Lesson1の“殻付餌”は十分に食べられるようになって、この頃は練り餌をあまり欲しがらなくなってきた。代わりに小松菜やキューリを突つくようになって、大好物のバナナやご飯粒は見ただけでぶるぶる……野生が微塵も感じられないのが悲しい。飛んでいる蛾や逃げまどう蜘蛛も自力でゲットできるようになった。Lesson 3の“水浴び”も一応はできるようになった(ただしサランラップにこぼした程度の水で……涙)。
残るはLesson 4の砂浴びとLesson 2の“猫は恐い!”。砂浴び場では相変わらず一目散に砂を突ついている。だが、座布団やカウチ、ベッドの上で砂浴びらしきことはひとまずこなしている。そして、目下のところ「恐怖の猫大作戦」を展開中!? もちろん、グッチ婆さんがご機嫌斜めであることは言うまでもない。


●7月24日(土)暴風豪雨のち曇り(32日め)
落雷直撃!(なんでうちなの〜?)

早朝から集中豪雨。ネットをぶらついたり更新用の写真の準備などしていたが、雷が激しくなってちょんの字が怯えた様子。「もぅ、しょうがないんだから〜〜〜」などとイチャイチャしていたまさにその時、リビング右手に見える庭の斜め上から、突然強烈な光の束のようなものが奔った。同時にパーンとタイヤのパンクのような音。何ー?と思った時には室内のコンセントの辺りから黒い煙がもわぁ〜と……。ちょんの字は素早く私の掌の中に避難。
後で調べてもらったところ、珍しいことに屋上のテレビのアンテナとリビングのテレビのブースターに同時に落雷したとか……。被害はテレビ二台と事務所の電話、他に照明器具がいくつか。古式ゆかしき冷蔵庫二台と洗濯機は壊れて欲しかったのに無事だった。しばらくインターネットは無理かも。
珍しい出来事に喜ぶRITZと怯えてた割には立ち直りの早いちょんの字のエキサイティングな体験。なぁんにも知らずに眠りこけていたグッチ婆さんは早くも夏バテ気味の様子。


●7月25日(日)晴だが曇りがち(33日め)
テレビのない夜

日曜だというのに斜め前の新築工事の音が煩く(我が家の視界が狭くなる〜!)、車で10分、ハウステンボスへ。のんびり遊びに出るなんて、ちょんの字が落ちてきて以来久しぶりのことだ。ビールランチを楽しんだ後、インターネットカフェへ。実はインターネットカフェなど利用するのは初めての経験!何故だか逃亡者にでもなったような気分がしてきて、結構楽しんだ。とは言え、正直なところはちょんの字が気になって仕方なかった。
初めて5時間も放って置かれたちょんの字くん、寝るまでの間ひと時も私の傍を離れなかった。今夜は夕食にも同席して、ライス(御飯粒)とサラダ(チシャとピーマン)をご相伴。食事前にアオムシさんやてんとう虫もどき(?)をたらふく食べていたので可愛く少食。満腹になるとさっさと梁の上へ直行した。明るいのも気にせず、いつもすぐに眠るようだ。
ちょんの字がリビングを住処と決めて以来、ちょんが寝る頃にはテレビだけつけて音量を下げて、部屋の電気を消すのだが、テレビのない今夜は草々に寝室に引っ込んだ。寝室に置いてある空っぽの鳥カゴを見ながら「いつごろ飛び立てるのかなぁ」と呟くと、「あれならすぐにでも大丈夫だろう」という声が返ってきた。準備ができていないのは、私の方なのか……。


●7月26日(月)雨(34日め)
「恐怖の猫大作戦」の効果あり!

リビングから寝室へはグッチがいる事務所の前の廊下を通らなければならない。この頃、その廊下をちょんの字がの行き来するようになった。見ていると、グッチが見える場所までは跳ねて行き、寝ているのを確認してから飛んできているのだった。「恐怖の猫大作戦」の効果ありだ!
猫大作戦の実態は・・・なんのことはない、平気でグッチ婆さんに寄ってきていたちょんの字をグッチが襲うのだ。と、上手くいけば始めから問題はない。要するに追いかけようともしないグッチ婆さんを私が抱きかかえ(重い!)、逃げようともしないちょんの字を追い回していたのだ。これを毎日続けてみたところ、グッチ婆さんの首のカウベルの音を聞くとちょんの字は高いところへ飛び上がるようにもなってきた。これまでは逃げるどころか、お食事中のグッチに忍び寄っていたのだから、素晴らしい進歩だ。ただし、いきなり空を飛ばされるグッチ婆さんは迷惑顔……許せ、ちょんの字のためだ。
夕方、久しぶりにちょんの字を病院に連れて行った。リリースも間近だろうから、健康診断と言ったところか。きわめて健康、筋肉もよく発達していると言われたのに、帰りの車の中では涙が出た。
「よく頑張って育てたな。はじめは絶対無理だと思ったけどな」嬉し涙と思った主人がそぅ言ってくれた。私は、リリースは無理だと診断してもらいたかったのだと思う、たぶん。


●7月27日(火)ミニ台風(35日め)
お気に入りのゲーム(続々開発中!)

雷の次は台風5号〜!と思いきや、風は強かったが大したことはなかった。だが、家雀(家猫も……)は風を怖がる。ヒューヒュー、ゴーゴーと吹き付ける風の音に怯えて部屋中を飛び回りっぱなし。仕方なく、お気に入りのゲームで気をそらすことにしたら、案の定一件落着。
ゲームその1:座布団サーフィン
座布団を一枚用意するだけでしばらくはひとり遊び。足を折って座った状態のまま器用に滑って遊ぶ。私が指を動かすと、ぴーぴー鳴きながらずーっと指を追い掛ける。(砂浴びのつもり…?)
ゲームその2:アルミホイルサッカー(攻撃)
アルミホイルを小さく丸めてっ作ったボール、転がしてやると延々と追い掛けては嘴で転がし、追い掛けては飛ばし、時には足で蹴ることもある。反則技の“口くわえ攻撃”もお気に入りで、座布団が近くにある時は必ずその上まで運んでから遊んでいる。休憩時にはよく眠る。
ゲームその3:アルミホイルサッカー(守備)
アルミホイルボールをくわえている時に「ちょーだい、ちょーだい」と奪おうとすると、ボールをくわえたまま必死で逃げまどう。走りの勝負なのでこれはかなり疲れるらしく、ボールを隠すとたちまち私の掌に逃げ込んできて眠る。
ゲームその4:足の指シーソー
足の指にとまっては、まだかまだかと指を突つく。足の指を動かしてやると羽をばたつかせながら必死に掴まっている。大好きなゲームのようで、これだけは何故か私の足より主人の足の方が楽しいらしい。ただし、歩いていても足の指に乗ろうとして困る。ちょっと危険かも。。。


●7月28日(水)曇りで強風、深夜には土砂降り(36日め)
ちょんの字はリリースすることに決定!

仕事をしているとちょんの字がえらくお喋り……!? 何か変だとそっと見てみると、網戸にとまったちょんの字の向こうに雀が来てとまっている。気付かれないように作業の手を休めてじーっと見ていると、何度も何度もお互いに呼び合うようにして網戸越しにくっついたり離れたりしている。相手の雀はちょんの字よりも少し大きいくらい。
しばらくすると他の雀もやってきた。三羽、四羽と、ちょんの字のしがみついた網戸の近くにとまったり舞ったり。ちょんの字には怯えた様子のかけらもなく、むしろ一緒に遊びたいと網戸を破りそうな勢い。夕方になって雀たたちはいなくなったが、ちょんの字はいつまでも窓の外を見つめていた。
ずいぶん悩んでいたけれど、ちょんの字は明らかに自然の中で暮らすことを望んでいるのだと確信した。外の仲間たちは受け入れてくれそうだし、私は飛んでも跳ねてもすずめにはなれないのだ。今日の出来事でちょんの字はリリースすることに決定。危険はいっぱいだし、長生きもできないかもしれない。でも、その方が幸せなようだ。もちろん、もう少ししっかり食べれるようになって、水浴びが上手になって、砂浴びもできるようになって・・・と早くも先延ばししようとしている自分が見える。決めたはなから、しっかり淋しい……。


●7月29日(木)相変わらず土砂降り(37日め)
お気に入りのゲーム番外編

今日も一日雨のようだ。仕事をしながらちょんの字のお相手。今日はついにキーボードの上に降り立って、キーを突ついて遊んでいる。なんともまぁ、旺盛な好奇心……。
掌ブランコ:
キーボードを操作する私の掌の上で危なっかしくもバランスを保ちながら、満足げな様子。手を止めると、私を見る。「もっと!」とでも言っているように……。
突っ突き遊び:
髪の毛はもちろん、私の首筋のホクロ、ダンナのヒゲ、ほつれた糸、etc。ここ数日、私はホクロをバンドエイドで隠しているが(痛〜い!)、今度はバンドエイドはがしに挑戦中……。そういえば、正座した菊ちゃん(姑)の小さなお尻の下からちょこんと出ているまあるい足の指、この頃かなり気に入られているもよう。
ぶら下がり遊び:
時々、あえて肩や頭にとまらず、私の背中にぶら下がる。動くとぴーぴー喜ぶ。回転すると・・・もっと喜ぶ!?
RITZのお手伝い:
領収証の整理などしていると、広げた紙片の上にバタバタと舞い降りる。領収証が舞い散る。それが楽しいらしく、繰り返す。時にはお気に入りの一枚をくわえて逃げる。追っても追っても、ひたすら逃げる(数枚はいまだに手の届かない場所にある……涙)。


●7月30日(金)ようやく小雨(38日め)
サランラップのお陰で・・・

リリースしようと決めた私の心を知ってその気になったのか、やる気満々、レッスンにひたすら励むちょんの字。苦手だった水浴びもめっきり上手になって、今日などは二度も挑戦していた。この頃は水浴び中に私の指シャワー(指に水を付けて頭から浴びせる)も楽しんでいる。これもひとえにサランラップのお陰だ。
はじめは水を怖がって近寄ろうともしなかった。“すずめの学校”のH.P.の掲示板で「サランラップを水と勘違いして水浴びを始めた」というコメントを見つけて早速試してみたら、見事成功!最初は数滴の水で水浴びのつもりだった(爆笑)。次からは透明プラスチックのお皿をラップの下に敷き、少しづつ水の量を増やしていった。今では水浴び大好きになった。サランラップと“すずめの学校”に感謝!!!


●7月31日(土)一週間振りに晴れ
バジルの悪夢、再び……

かつて若葉の頃に、せっせと水をやってようやく芽を出した9種類ものバジルの双葉を、きれいさっぱり抜いてしまった菊ちゃん(姑)。かつて私が保存していた綿の種を大量に捨ててしまった菊ちゃん。つい先月には、植え付けたばかりのパプリカの苗を掘り起こしていた菊ちゃん(この時の被害は一本のみでセーフ)。今度は私が大事に育てていたわたっ子の苗を二本、抜き捨てていた!「綿だからね、雑草じゃないからね」と繰り返し言っておいたのに、30cm近くに育っていたのに、花芽も付いていたはずなのに、「なんか植えとったと?」ですと〜!? 腰が砕けそうだった。。。
 あぁ〜、今年の綿はなんて不運なのだろ……!それにしても一本、何故か抜かれなかった一本(もしかして、ここで思い出したのか…?)、最後の一本だけでも大事に育ててあげよう。
ちょんの字はすっかり自分のペースで暮らしている。今日は私よりも網戸に来るすずめたちの方が気になっていたようで、リビングと寝室をすごいスピードで飛びながら行き来して、庭のすずめたちの後ばかり追っていた。そろそろ……かな。。。

つづく

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