ユーニス・バーチマンがカヴァディル一家を殺したのは、読み書きができなかったためである。
これという動機や予測もなく、金のためでもなければ身の安全を守るためでもなかった。犯行の結果、ユーニス・バーチマンが文盲であることは、一家族あるいはひとにぎりの村びとばかりではない、全国、津々浦々に知れわたってしまった。殺人によって彼女鵜はなにひとつ得たものはなくわが身に災厄をもたらしたにすぎなかったが、その異常な心の片隅で、自分がなにひとつ果たしえないことは承知していたのだ。彼女の友人でありパートナーであった人物は狂人だったけれども、ユーニスはそうではなかった。二十世紀の女性の姿をかりた先祖返りの類人猿、恐ろしいまでに実際的な正気をもちあわせていた。 |
話にならぬほど軽すぎる量刑であると言うものもあった。だが、ユーニスは十分に罰せられたのだ。評決、あるいは刑の宣告の前に、決定的な一撃が加えられた。彼女の弁護士が、世界に、判事に検察官に警官に一般の傍聴人に、記者席でせっせとメモをとっている新聞記者に、彼女は読み書きができないと語った時に。
「文盲?」とマナトン判事殿は言った。「あなたは字が読めないのですか?」
彼に促されて彼女は答えた。真っ赤な顔をして震えながら答えた。そして彼女のような障害をもたぬ人がそれを書きとめるのを見た。
彼らは、ユーニスの根本的な欠陥を除去するよう励まして彼女を更正させようと試みた。彼女はがんとして拒んだ。もう手遅れなのだ。彼女を変えるにも、彼女のしたこと、彼女が引きおこしたことを避けるにも、もう手遅れなのだ。
ちり、もえがら、ごみ、欠乏、破滅、絶望desperate、狂気、死、狡猾、愚劣、言葉、かつら、くず、羊皮紙、強奪、先例、隠語、たわごと、ほうれん草(チャールズ
ディケンズが小鳥たちに付けた名前からの引用) 。 |