ハサミ男の三番目の犠牲者は、目黒区鷹番に住んでいた。
ところで、わたしはこれまで鷹番という町名を見たことも聞いたこともなかったので、いったい目黒区のどのあたりにあるのか、最寄りの駅は何線のどこなのか、全く見当がつかなかった。
第一、この町名は「たかつがい」と読むとばかり思い込んでいた。もちろん「ちょうつがい」からの連想で、二羽の鷹が仲むつまじく青空を飛んでいく、江戸時代の屏風絵のような光景が頭に浮かんだ。 |
「このクッキー、なかなかおいしいよ。きみは食べないの?」
「さんざん食べました。太っちゃいそうなほど」
少女の笑みにつられて、わたしもほほえんだ。
彼女は十五、六歳くらいで、きっと老婆の孫なのだろう。髪を後ろで結んで、赤いセーターとキルトスカートがよく似合っていた。丸顔にはおとなしそうな微笑を浮かべている。
とても頭のよさそうな子だった。
「きみ、名前はなんていうの?」
と、わたしは訊いた。
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