■死ぬかと思った ■罠にはまった ■胸にこたえた ■腹がよじれた ■寝るかと思った

殊能将之の書庫


ベストセラー

殊能将之(しゅのうまさゆき)氏の作品にはよく「くすくす」笑う登場人物が出てくる。このくすくす笑いに氏の持味が隠されているように私は思う。人物たちのちょっとおかしな性格や行動はもちろん、文中に盛り込まれた様々な仕掛け、様々な喩え、くどいほどの様々なものへのこだわりが読み手を「わはは」「げらげら」ではなく、くすくす笑わせるのだ。

涙を飲んで選ぶオススメの一冊
ハサミ男

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殊能将之 黒い仏:名探偵石動戯作シリーズ
初版10.Jan.'2001/講談社NOVELS/ブックデザイン=熊谷博人、カバーデザイン=辰巳四郎/'03年読
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主人公に昇格した名探偵、石動戯作が調査に出向いた福岡県のはずれの古寺には、顔がない奇妙な本尊があった。依頼は九世紀に天台僧が唐から持ち帰った秘宝探し。古書の漢文に悲鳴をあげる石動の周りには、福岡で起きた奇妙な殺人事件の捜査の手が伸びていた。
『本格ミステリ新時代の幕開け』と銘打たれたこの傑作だが、読んで怒る人も多いのではなかろうかと危惧している。何故なら・・・いやいや、これを書くとネタバレになってしまうので、興味のある方はまず読んでみるべし。\760とお安いのだから、怒るにしろ笑うにしろ一読の価値は十分にある。ちなみに私は大いに笑い転げた。今後がますます楽しみな作家だ。

殊能将之 美濃:名探偵石動戯作シリーズ
初版Apr.'2000/講談社NOVELS/カバーデザイン=辰巳四郎(文庫)/'03年読
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難病を癒す奇跡の泉の発見に湧く山深い小さな村、泉のある洞くつの入り口で発見された首なし死体。〈鬼の頭を切り落とし・・・〉古くから伝承されたわらべ唄になぞらえて次々と惨殺されていく富豪一家。横溝正史へのオマージュとして書かれた一冊は、ハサミ男から一転してジャパニーズ正統派探偵小説である。
そして、終始にこやかに活躍する我らが名探偵、石動戯作 (脇役) の登場となる。「振り向けばいつも君がいる」といった具合にどこにでも顔を出す。そんな石動探偵の口を借りて語られるウンチクの数々がまた面白い。この一冊には、殊能氏のこだわりや隠喩がぎっしりと詰まっている。たとえば美濃牛=ミノタウロス。ギリシャ神話まで巻き込んで、田舎の町がどうなっていくのか・・・続きは読んでのお楽しみ!

殊能将之 ハサミ /第13回メフィスト賞受賞
初版10.Jan.'2001/講談社NOVELS/カバーデザイン=北見隆、写真撮影=大滝吉春(文庫)/'03年読
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「やられた!」「見事に騙された!」・・・これが読直後の感想である。どこで罠にハマったのかとすぐに再読した。
美少女たちを殺害した後に鋭利に研いだハサミをその美しい喉に突き立てる連蔵殺人犯ハサミ男。自殺願望に取り憑かれ、自殺と他殺をくり返し、二重人格のもう一人の自分の存在にもげんなりしているハサミ男。自分自身に「なぜ」とは問わず、「どうやって」とだけ問うハサミ男。そんな楽天的破滅型人間(?)のハサミ男がイヤだイヤだと言いつつも、自分を騙った偽ハサミ男の正体を暴くハメに陥る。
シニカルとユーモアを饒舌なまでに使いこなし、三重四重の罠をはり巡らした絶対オススメの一冊。出版界で話題になっている覆面作家の殊能氏・・・その正体も今後の謎として残る。

 

mercy snow official homepage:殊能将之公式サイト


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