かつて幼児誘拐殺人事件の責任を一身に負わされ、記者会見場で記者相手に切れてしまい左遷された神奈川県警の警視・巻島は、再び特別捜査官として混迷する連続児童殺人事件の捜査を指揮することになる。しかも、その捜査方法は、メディアと手を組んで犯人に呼びかけるという史上初の劇場型捜査だった。
「犯人よ、今夜は震えて眠れ」・・・ちょっとぉ、カッコ良過ぎるよぉ〜と思わず声が出た。かつて「ヤングマン」と渾名され、のちに「プッツン刑事」と揶揄された巻島だが、これがクールにしてダンディー、内なる顔は傷つきやすく思索に富んでいる。その他の登場人物も味わい深いキャラから一癖も二癖もあるキャラ、「結構いるんだよなぁ、こんな奴」と呟かせるキャラまで、一人一人がこれまた良い。逆に、曖昧模糊とした犯人像が、「姿の見えない犯人」が巻島の中で「怪人」と化していく過程を、そして巻島が一気に反撃に出るクライマックスを、さらにさらに効果的に引き立てている。
再読でさえ一気に読まずにはいられない展開と深みのあるストーリー。2005年本屋大賞にもノミネートされている。
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