そこはかとなくもの悲しい喪失感が残る4篇を収録。磨きがかかってきたなぁと感じられた乙一氏の世界。「文章が幼い」という読者書評をよく見かけるが、これも乙一氏の罠ではないか・・・と私は密かに思っている。それに、タイトルに「。」が付いた本もはじめてだ(=^^=)
石ノ目
山深い小川のほとり、乳白色の霧に閉ざされた視界の中には、密集することなく孤立することもなく、数限りない石像が立ち並んでいる・・・使い古された感のあるテーマを伝承民話風に美しくまとめあげ、幽玄な世界を描き出している。
はじめ
いつも野球帽をかぶって、冬でも半ズボン姿。袖口はいつも鼻水でがびがびになっている「はじめ」という名の少女は、「誰かに罪をなすりつけたい子供たちにとって、まことにちょうどいい存在だった」のだ。こうして、誰も知るはずのないはじめは、誰もが知っているはじめになった・・・とても爽やかでちょっと悲しい大好きな一作。
BLUE
いわゆるミソッカスのぬいぐるみBLUEを中心に西洋のお伽話風にまとめられたファンタジー。さりげなく「いじめ」をモチーフにしたこの作品は、あくまでお伽話として読んでみると面白いかと思う。
平面いぬ。
やられた!・・・と笑い出してしまったこの一作では、イレズミの子犬が大活躍(大迷惑?)。もちろん笑うだけでは終わらない乙一氏ならではの秀逸なストーリーと結末。「愛玩動物」が「家族の一員」になるまでのストーリーでもあり、さりげなく“ペット”に関する考察がベースにある。 |