■死ぬかと思った ■罠にはまった ■胸にこたえた ■腹がよじれた ■寝るかと思った

乙一の書庫


ベストセラー

「夏と花火と私の死体」一一なんとなく心惹かれるタイトル。めくってみると、ナント'78年福岡県生まれの乙一(おついち)氏が16歳の時に執筆、17歳にして集英社のジャンプ小説・ノンフィクション大賞受賞、しかも小野不由美氏が絶賛!我孫子武丸、法月綸太郎も騒然としたとある。新たなる天才の出現か……とレジに走った。
MEMO: 2冊め『天帝妖狐』での自己紹介文「ワープロ練習のために書いた小説がほめられて小説家になる。ホラー小説のわりには怖くないと、近所の犬や猫に評判。実は普通以下の人」……う〜む、興味津々。

涙を飲んで選ぶオススメの一冊
平面いぬ。

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乙一 平面いぬ。:短編4篇
第一刷25.Jun.'03/集英社文庫/'03年読
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そこはかとなくもの悲しい喪失感が残る4篇を収録。磨きがかかってきたなぁと感じられた乙一氏の世界。「文章が幼い」という読者書評をよく見かけるが、これも乙一氏の罠ではないか・・・と私は密かに思っている。それに、タイトルに「。」が付いた本もはじめてだ(=^^=)

石ノ目
山深い小川のほとり、乳白色の霧に閉ざされた視界の中には、密集することなく孤立することもなく、数限りない石像が立ち並んでいる・・・使い古された感のあるテーマを伝承民話風に美しくまとめあげ、幽玄な世界を描き出している。

はじめ
いつも野球帽をかぶって、冬でも半ズボン姿。袖口はいつも鼻水でがびがびになっている「はじめ」という名の少女は、「誰かに罪をなすりつけたい子供たちにとって、まことにちょうどいい存在だった」のだ。こうして、誰も知るはずのないはじめは、誰もが知っているはじめになった・・・とても爽やかでちょっと悲しい大好きな一作。

LU
いわゆるミソッカスのぬいぐるみBLUEを中心に西洋のお伽話風にまとめられたファンタジー。さりげなく「いじめ」をモチーフにしたこの作品は、あくまでお伽話として読んでみると面白いかと思う。

平面いぬ。
やられた!・・・と笑い出してしまったこの一作では、イレズミの子犬が大活躍(大迷惑?)。もちろん笑うだけでは終わらない乙一氏ならではの秀逸なストーリーと結末。「愛玩動物」が「家族の一員」になるまでのストーリーでもあり、さりげなく“ペット”に関する考察がベースにある。


乙一 夏と花火と私の死体:短編2篇
第一刷25.May.'00/集英社文庫/ジャンプ小説・ノンフィクション大賞を受賞/'01年読
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語り手の「わたし」があどけない口調でたらりたらりと語る物語はなんだかちっとも怖くなくて、かえって面白がっているような口調でさえあって、そのことがなんだか妙に怖かった。何故か……って、「わたし」は……いえいえ、これは秘密。。『優子』にも一風変わった独特の空気感があって楽しめた。

乙一 暗いところで待ち合わせ
第一刷25.Apr.'00/幻冬舎文庫/ジャンプ小説・ノンフィクション大賞を受賞/'03年読
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事故で視力を失った少女が一人暮らす古い家の居間の片隅には、息を殺してじっと身を潜めている少年の姿があった。やがて暗黙の了解の下、二人の奇妙な同棲生活がはじまった・・・家のそばの駅で起きた殺人事件を背景に、不器用で繊細な二人の若者の心の移ろいを見事に描きだした作品。清々しい感動だけでなく、ミステリーとしての楽しみも存分に楽しめるお薦めの一冊。


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