宮部みゆきの書庫

ベストセラー

クリクリよく動く目とあの童顔からは想像もつかない、なかなか社会的な小説を書くのだなぁ……これが本を手にしたときに腰巻きから得た第一印象だった。でも、読み始めると硬過ぎず饒舌過ぎず、つるつると楽に読める。そして、ところどころに散りばめられた、時折クスッと笑いを誘う楽しげなセリフを見つけてはあのまぁるい目を思い出して安心するのだ。老人や少年の描写、これは巧いなぁ。。。

涙を飲んで選ぶオススメの一冊
蒲生邸事件

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  さよなら、キリハラさん
いつも騒々しいほど賑やかな家の中から、ある日突然、すべての音が消えた・・・静かに老いていくおばあちゃんと謎のキリハラさんの心の触れ合いが胸に響く。傑作短編集『短編復活』に収められた短編。
 

宮部みゆき 模倣犯 模倣犯上下巻
初版20.Apr.'01/小学館/'01年読
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「人間狩り」を楽しむ比類なく残忍な知能犯が巻き起こす連続殺人。被害側の不条理に戸惑い苛立つ遺族たち。そして、孫を殺された老人と、重い過去の記憶に喘ぐ第一発見者の少年は独自の行動を始める。
久々に襟元ぐいっとひっ掴まれ、寸暇を惜しんでのめり込んだ。さすが!と言わずになんと言おう。悲惨な描写などないのに、怖い!長く張り巡らされた伏線、類い稀なる犯人像、爽快な結末。が、しかし、犯人には最後の最後までもっと冷徹であって欲しかった!あともう少し、もうちょっとだけ、怖い思いをさせて欲しかった……って、贅沢かなぁ!?

あやし〜怪〜
初版30.Jul.'00/角川書店/'01年読
書評等の評判、江戸ものが好きなこともあって楽しみしていた一冊なのだが、何故だか江戸の匂いを嗅ぐこともできず、さらさらと読んでするりと過ぎてしまった。

宮部みゆき クロスファイア クロスファイア上下巻
初版30.Oct.'98/光文社カッパノベル/Jan.'96から「小説宝石」に連載/'01年読
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「あたしは装填された銃だ」・・・パイロキネシス(念力放火能力)を持つ青木淳子は人として生きることを捨て、無軌道に殺人を続ける若者たちを“処刑する”。だが、数々の思い出、女であること、そして人としてのやさしさを完全に捨て去ることはできなかった。
有無を言わせぬ殺人のシーンなど、始めは首を傾げたりなどしながら読んだが、後半からは一気にのめり込んた。ぐっと引き寄せておいてから、一気に突き放されたような結末は哀しくもあり、安心もした。

宮部みゆき 理由
初版1.Jun.'98/朝日新聞社/直木賞受賞、第17回日本冒険小説協会大賞/'01年読
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荒川の高層マンションで起きた一家四人殺し・・・しかし、そこに住んでいるはずの家族はほかの場所で暮らしていた。殺されたのは誰?なぜ?近所の住人たちは何を見ていたのか?
「一家四人殺し」という事件をあたかもノンフィクションのように、時にはインタビュー形式を交えて書くという新しい挑戦(らしい)には妙に生々しい臨場感があった。ふと気がつくと……宮部ワールドの中にいて、私はまるで物見高いご近所の住人ように2025号室を覗き込んでいた。

宮部みゆき 蒲生邸事件
初版10.Oct.'96/30.Jan.'99光文社カッパノベルス/日本SF大賞受賞/'01年読
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受験のため平河町一番ホテルに宿泊していた少年は、二月二十六日未明、ホテル火災に見舞われ、危うく焼死するところを謎の男に助けられた。そしてふと気がついた時、そこは昭和十一年二月二十六日の、今まさに二・二六事件が動き始めようとしている雪の降りしきる帝都だった!
久々に読んだタイムトラベルものだが、ナントナント、二・二六事件の最中に飛び込むとは!!!昭和初期の日本、礼儀正しく古風な日本の女や男たち、美しい令息令嬢、そこにひょっこり現れた浪人が確定したばかりの現代っ子・・・このギャップは面白い。スリル、スピード感、臨場感もたっぷりで、大いに楽しませてもらった。

宮部みゆき 鳩笛草:短編集
朽ちてゆくまで/燔祭/鳩笛草
Sep.'95 光文社/20.Apr.'00 光文社文庫/'01年読
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超能力を持つ女性が主人公になった叙情的な三作品。SFとしてではなく、それぞれがその能力とどう折り合いを付けていくかというところに焦点が絞られていて、なかなか面白かった。“燔祭”は後にブレークするクロスファイアの青木淳子が生まれた作品。「私は装填された銃のようなもの」・・・強烈なデビューだが、とても映像的で美しい。

淋しい狩人:短編集
六月は名ばかりの月・黙って逝った・詫びない年月
嘘つき喇叭・歪んだ鏡・淋しい狩人
Oct'93 新潮社/1.Feb.'96 新潮文庫/'01年読
古本屋主人のおじいちゃんと高校生の孫が活躍する巻き込まれ型の探偵もの仕立て。殺伐とした事件が、宮部氏の手にかかると心温まる人情ものに様変わり……巧い!の一言に尽きる。「祖父へ」との献辞の向こうに思い浮かぶ宮部氏の優しいおじいちゃんの姿が、羨ましく思えた。

宮部みゆき 火車
Jul.'92 双葉社/1.Feb.'98 新潮文庫/山本周五郎賞受賞/'01年読
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婚約者が失踪したので探して欲しい・・・休職中の刑事が依頼された人探し。捜査をはじめた刑事の前に明らかになる二重三重に絡み合った女の過去。
温かい人柄の登場人物たちの中で、女の哀しさがよりいっそう際立つ。クレジットカードによる自己破産、住宅ローンによる一家離散……重く堅苦しい現代社会の落とし穴たる問題を見事に咀嚼し、悲惨な事件を叙情的とさえ思えるほどの物語りにまで練り上げた宮部みゆき氏に拍手喝采。読み終えても未練たらしく何度もページをめくり、しばらくは手放せなかった。

 

大極宮:大沢在昌、京極夏彦、宮部みゆき公式サイト


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