■死ぬかと思った ■罠にはまった ■胸にこたえた ■腹がよじれた ■寝るかと思った

桐生祐狩の書庫


ベストセラー

きめ細やかで大胆。爽やかで陰惨。瑞々しく残酷。

涙を飲んで選ぶオススメの一冊
夏の滴

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桐生祐狩 夏の滴
初版30.Jun.'2001/角川書店/装画=山田博之/装丁=大野リサ/8回日本ホラー小説大賞長篇賞受賞/'01年読
ブックマーク
小学四年生の夏休み、突然引っ越した友達一家の行方を突き止めて、二人の少年と少女は列車に乗った。だが、こっそり忍び込んだ引っ越し先の家に少年の暮らす気配はまるでなく、地下室で瓶に貯えられた奇妙などろどろの液体をみつけただけだった。近頃なにかが変わった街の様子、口を閉ざす大人たちへの不信、学校で流行り始めた無気味な植物占い・・・不吉な予感に駆られて真相を追う子供たちは、身の毛もよだつ恐ろしい結末へと足を踏み入れていた。
「鬼畜でグロテスクでインモラル」とう帯書き通り、あまりいただけない部分も多いが、少年たちの瑞々しさがオブラートのようにそれを包み込んでいて不快感はない。人を取り込もうとするようなミヤマスギの洞穴、教室での苛めを一身に受ける八重垣という少女、きらめく夏の陽射しと少年の好奇心というフィルターを通した瑞々しく不思議な世界には釘付けになった。


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