レスキュー&育て方

即席“すずめの学校”

短い距離でも飛べるようになって、部屋の中でも安全に過ごせるようになったら、一人で生きていくための訓練を始めましょう。ここで大事なことは、すべてのレッスンにおいて「心を鬼にして妥協しない、甘やかさない」こと。きびしければきびしいほど早く覚えます。早く放野できるほど、生きのびる確率が大きくなります。ヒナの将来と命は里親さんの手ににぎられています。

可能ならば、この頃からはカゴに入れない暮らしをさせましょう。ヒナにとっては充分に飛べるようになるかどうかの瀬戸際で、この時期に十分な練習をさせないと上手に飛べなくなってしまいます。長時間飛ぶこと、人がいないところで一人の時間を持つこと、また、夜に自分の気に入ったねぐらをみつけてそこで寝ることも大事です。

カゴの中にばかりいると、カゴの外でさえこわがるようにもなります。骨折や障害があっても、訓練で克服(こくふく)したヒナはたくさんいます。彼らが鳥だということを忘れずに、たくさんたくさん飛ぶ練習をさせてあげましょう。

一人餌のレッスン自立のためのレッスン

左にメニューフレームが表示されてないときはここをクリック

一人餌のレッスン

「一人餌」とは自分で餌をみつけて、自分で食べることです

親に人の怖さを教えられる前の野生のヒナが、平気で人に「エサちょーだい!」と口を開けることがあります。野鳥のヒナたちはもともとはかなりの甘えん坊なのでしょう。親鳥や世話役の若鳥たちもかなりきびしくしつけるようですが、なかなかてこずっているようです(^^;

立ってちょこちょこ動き回るようになったら、里親さんもいつまでも過保護ではいられません。野生の世界では、口を開けて待っていても誰もエサを入れてはくれません。自分でみつけて食べることができなければ、待っているのは・・・死です。

ですから、人を呼べばエサをもらえると思っているヒナに、人を呼んでも満腹にならないということを教えましょう。そのためになにより大事なことは、過保護に育てないことです!「過保護=ヒナの危険」ということを、くれぐれも忘れないようにしましょう。

ただし、食べなれないうちは、がんばって食べていても胃の中にまでは入っていないことの方が多いので、ちゃんと食べれるようになるまでは手からもエサをあたえつづけます。糞をしっかり観察して、ちゃんと食べているかどうかチェックしましょう。糞(フン)については次のページ育てる上での注意点でお読みください。


種子や雑穀を食べるレッスン(スズメなど)
すずめは殻付きのエサによく興味を示し、なれると殻を上手にむくことに夢中になります。はじめは殻付きの雑穀(からつきのざっこく)やヒマワリの種などたっぷりのエサの中にヒナを置く状態で食べることになれさせ、上手に食べるようになったら部屋の中のあちこちに少量づつをかくすようにばらまいてみましょう。

置き場所も毎日変えましょう。見えにくい場所に置いたり、プランターを部屋に持ち込んで植物にかくれる土の上にばらまいたり、ときにはこまかい砂利などのすき間にばらまいて、上手にとる練習もしてみましょう。最近は粟穂(あわほ)を売っているところもあり、ネットの通信販売でも手に入りますから、こういったものも利用しましょう。

クチバシをきたえるため、いろんな味を教えるためにも種類の豊富な雑穀を用意しましょう。ただし、殻つきの餌は、たくさんあるように見えても、じつは殻ばかりが残っているということがあり、これで飢え死にさせてしまうという事故もあります。毎日殻を吹き飛ばして、つねに新しい餌を足すことも大事です。

こうしてばらまいたエサに興味を示さない場合は、すり餌など日頃食べているエサに殻のついていないむき餌や粟玉をのせて食べさせ、まずは食べ物であることを教えましょう。むき餌や粟玉をつつくようになったら、殻のついた雑穀を足していきます。これらの餌については使う上で注意が必要ですから、まだ読んでいない方は餌の使い方と注意点をかならずお読みください。


果実や木の実、野菜をつついたり花の蜜を吸う場合(メジロ、ヒヨドリ、ムクドリなど)
ハシなどに好みの果物を丸ごと刺しておいたり、木の実や花がついた枝ごと置いておく、木の実を丸のまま転がしておくなど工夫しましょう。野菜はちいさめのグラスに大きめのまま入れておきます(つつきやすく、倒れないように)。また、家でフルーツや野菜を育てている方は、ちょこっと移植するなどしてプランターごと部屋に持ち込む手もあります。フルーツや野菜はヒナの目の前でちぎり取り、それをそのまま食べさせてみましょう。自分でつついて食べるようになれば、大成功ですね。


幼虫を食べる場合(すべての野鳥)
アオムシやミルワームをあたえる時は、まずは虫をピンセットなどではさんで自分で食いつかせることから始めましょう。次には、目の前で落して、それを拾って食べさせるようにします。また、木の枝や葉っぱの裏をはわせるなどして、自分でさがさせましょう。
これをやると、思わぬところをアオムシがはいまわっていて、ギャ〜!ってなこともあります。

また、生きたアオムシなどは止まり木にたたきつけてから食べるので、中身が飛びちることもよくありますのでご用心!でも、これが彼らの食事法です(^^;  親鳥に教えてもらえないヒナたちにとっては 生きていく上でなにより大事なことです。室内ではいろいろ問題もありるでしょうが、短期間のことですから頑張ってあげましょう!


昆虫を食べる場合(ツバメ、スズメなど)
家の中で放し飼いで育てていると、自然と家の中にいるちいさな虫などを捕まえて食べるようになります。バラバラになったクモの手足やガの羽根などが散らばっていたら、それはおやつの名残りでしょう。健康面、運動面だけでなく、こういう点から考えても、放し飼いで育てることは重要です。

自分で捕って食べてないような場合は まずは生きた虫をピンセットなどではさみ、ひらひらさせているものに食いつかせる練習から始めましょう。私は、まだ飛べない頃のスズメを指に乗せて家中の窓をめぐり、網戸に止まったちいさな羽虫を食べさせていました。おやつのついでにお掃除してもらうわけですが、飛びはじめるとすぐに自分でエサを捕るようになりました。

目の細かいアミなどでおおったカゴの中に生きた虫を放して、網に止まったところを外側から食べさせるなど、いろいろと工夫してみましょう。これらの訓練は、飛びながら昆虫を捕食するツバメにはとくに必要な訓練です。


地中の虫を食べる場合(ムクドリなど)
地面に虫を埋めて、その上に底を外したカゴごと置いて、自分で地面をつついて餌を探す練習など工夫しましょう。


木の穴や岩のすき間の昆虫など食べる場合(ミソサザイなど)
倒木や穴のある岩などを探してきて、昆虫などを隠して見つけさせるなど工夫しましょう。


魚を捕って食べる場合(カワセミなど)
生きたままの魚を大きな入れ物の中で泳がせ、自分で捕る練習をさせます。


なかなか自分でエサを食べようとしない場合

■ 手から与える餌の量を減らし、満腹になるまであたえない
たとえばスリ餌の場合、お腹が空いて鳴いた頃にスリ餌を器ごと近くに置き、手で食べさせないでいると自分からつついて食べます。その時、そのスリ餌 の上に殻付きの雑穀などを乗せておけば味を覚えて、じきに食べるようになります。

■ エサをあたええる間隔をすこしづつ長くする
お腹がすいて鳴いても決してすぐには与えずに、お腹がへって自分でエサを探すようにしむけましょう。少しづつでも食べるようになったら、さらに手であたえる間隔をひろげていきます。

■ 本来自然の中で食べるはずのいろんな虫や木の実などを食べさせる
すり餌などをねだって口を開けているところに、入れてやるといいそうです。食べられるものだと教えることも大事なのですね。いろんなものを見せながら食べさせると、次からは自分で食べることもあります。例えば、大好物のものを手から食べさせます。喜ん食べたらさらにいくつか食べさせ、もっと欲しがった時に食べさせたいエサと混ぜてばらまきます。

このページのトップへもどる

自立のためのレッスン

上手に飛ぶレッスン
しっかり飛べるようになって、部屋の中の家具などの配置にもすっかりなれたようでしたら、できる限り放し飼いの状態にもっていきましょう。人が暮らす部屋は野生にくらべたらずっと狭いものですから、ただでさえ運動不足になりますし、この時期になにより大事な胸の筋肉などの発達が遅れてしまいがちになるものです。ここまで来たら放野も間近ですから、可能な限り長い時間、飛ぶ練習をさせ、翼をきたえ、翼を動かす胸の筋肉をきたえましょう。

上手に飛べるようになったら、着地しようとしたときに軽く追い立てるなどして、旋回しながら部屋を何周も飛べるように練習させましょう。また、日頃こわがるものなど使って、急旋回の練習もさせましょう。こわがらせるのは可哀相なものですが、心を鬼にして頑張ってください。ボーッとしているようでは野生を生き抜いてはいけません。また、わがもの顔で堂々としていると頼もしいものですが、これも野生では危険ですね。いつもビクビクしているくらいが野鳥としては望ましい状態です。


水場をさがすレッスン
自分で水場をさがして水を飲むことができなければ、野生で生きていくことはできません。野生では水場は水を飲むための場所であり、水浴びをするための場所でもありますから、飲み水用、水浴び用と別にする必要はありません。本能的にほとんどのヒナがすぐにできるようになることですが、甘やかしすぎて育てた場合、これさえできないヒナもいます。里親さんは大いに反省しつつ、以下の訓練をしてあげましょう。

次の項目“水浴びのレッスン”を参考にヒナが溺(おぼ)れない程度に浅く入れた水場を用意し、一人餌の訓練と同じように、毎日場所を変えて見つけさせるようにしましょう。放し飼いにした方がすぐに覚えます。放し飼いができない環境では、できれば鳥かごに水入れを置くようなことはせず、水を飲ませるためにちょこちょこカゴから出すくらいで訓練しましょう。


水浴びのレッスン
水浴びは体を清潔にたもって病気を予防したり、暑いときには温度調節になったり、もちろんストレス発散の効果もあって、鳥にはとても大事な日常の行動です。でも、人間が育てていると見本が見せられませんし、ちょっとした環境の変化におびえる野鳥にとってはあたらしいモノ=こわいものなのです。ここでは私が教わった簡単な方法を書いておきます。

ちょっとわかりにくいでしょうが、写真の右手前のキラキラした部分が“ピオの水浴び場”です。透明で浅い食品トレイの上に大きめのサランラップをひろげてあちこちしわを寄せて、全体に水をふりかけて床の上に置いておきます。ちびっ子が興味をもって近よってくるまでしらんぷりしていると、好奇心からかならず近よってきます。ラップは水たまりのように見えるそうです。

大事なのは、ここで絶対に手を出さず、ラップの上で水をついばんだり、すべるように遊びはじめるまで気長にまつことです。気がそれてよそに行っても、しらんぷりしていましょう。水が乾いたら、またふりかけておきます。水のついたラップになれてきたら、水の量を少しづつ、少しづつふやしていきます。じきに水浴びをはじめます。コツは水の量を少しづつふやすことと、自分で水浴びをはじめるまでは決して強制をしないことです。

それから、冷たい水ではなく常温の水の方が安全で、効果的でもあります。鳥の尾羽の付け根の辺りにはちいさなイボのような脂腺があり、鳥たちはこの脂腺から出る脂をクチバシで全身の羽毛に塗りつけるために羽づくろいをします。羽に行きわたったこの脂のおかげで羽毛が水をはじき、雨から身体を守って適切な体温を維持してくれます。あたたかいお湯などで水浴びをさせてしまうとこの脂が落ちてしまい、体温の維持が出来なくなります。また濡れた羽毛に人の手がふれると、さらに脂分をとってしまうことになります。ですから、お湯で水浴びをさせない、水浴びの後にはさわらないことがとても大事です。とくに放野直前に水浴びをさせる場合、決して手でさわらないようにしましょう。

ちゃんと水浴びができるようになったら、自分で勝手にやりはじめます。暑い日には何度も浴びたりしますので、水はいつも清潔なものと取りかえておき、日が落ちるころからは体が冷えるので浴びさせないようにします。置き場所は毎日変えましょう。
*参考になるかどうか……写真をクリックすると、好奇心から近よってくる感じが見られます


砂浴びができたら一鳥前!
飛びはじめたばかりの頃にはまだ砂浴びはしまませんが、よく座布団やソファーの上をすべって遊ぶのはたぶん砂浴びの練習になるのでしょう。私がよく行く病院の先生は「砂浴びをはじめたら一鳥前」と笑っていました。成鳥になったらやるようですから、これはリリース後に自分で覚えてもらうことにしましょう。

成鳥になっても家で育てる必要がある場合、盛大に砂を飛ばすので家の中ではこれも大変ですが、これもまた体につくちいさな虫や病気を予防したり、遊んでストレスを発散させる大事な行動です。長く育てる必要のある里親さんはなんとか工夫をして、頑張ってください。
砂浴びには、やはりお日様で温まった砂を一番喜びます、お天気が良い日の庭では、あちこちに鳥たちの砂浴びの跡のちいさなお椀型の凹みがたくさん残っていますよ。


恐怖のレッスン
家のなかで家族といっしょに愛情いっぱいにそだてられた鳥たちには恐怖の経験が少ないものです。でも、野生にもどると、彼らの世界には危険がいっぱいです。彼らの本能や仲間たちが教えてくれることもありますが、せめて猫やヘビがこわいものだということくらいは教えておかなければなりません。逃げなければならない場面で平然としていたり、ボーッとしてたり、逆にすくん動けなくなっるようでは訓練不足です。生きていくためには、ビクビク、オドオドしているくらいがちょうど良いのです。里親さんは心を鬼にしてきたえるのがヒナのためです。

我が家には猫がいますが、昔インコと暮らした鳥好きの猫。すずめたちもまるでこわがらず、だんだん近よっていくようになりました(ねらいは猫のエサ)。これはマズイ……とはじめたのが「恐怖のレッスン」。すずめたちが猫に近よりそうなとき、遊びに夢中になっているとき、のんびりくつろいでいるとき、たまに猫をかかえてすずめっ子たちを追いまわしました。何度もくり返して、これは効果てきめんでした。ただし、猫や動物におそわれて保護された子たちのなかには、恐怖ですくんで動けなくなる子もいます。この場合は恐怖心をあおるばかりで逆効果になります。

もちろん、猫がいない家ではできませんが、どこかから借りてきてでも……と思われる方は、できるだけおとなしい猫で、通ってくることがないように目かくしでもして連れてくるくらい、くれぐれも用心をしてください。

■ 油断している時に大きな音をたてておどかす。すばやく飛びたつ練習はとても大事です。
■ ヘビ対策:長くて太い黒っぽいヒモをかくしておいて、油断している時に近くに投げる
■ 人間もまたちがう意味でのこわい存在です
野鳥を育てるには人に慣らさないことが大事だとも言われますが、ベテランの里親さんに聞いてみても、人が育てる場合、とくにちいさなヒナの場合は慣れないように育てることの方が難しいものです。
だけど、もしもちいさな小鳥がふっと自分の肩や頭にとまったらどうでしょう?うれしくて、かわいくて、思わずつれて帰ってしまいますよね。せっかく頑張って放野したのに……!?こんな時のためにも、せめて、家族以外の人間はこわがるようにしておきましょう。友人が遊びに来たときなど、追いまわしてこわがらせてもらう手もあります。我が家ではこれにも力を入れました。なにしろ、私の家の近くには“鳥取り名人”がいるのです。石を投げて鳥をつかまえる名人で、しかも、その鳥は食卓に並ぶのですから……。

このページの目次に戻る

トップに戻る