RITZのスズメ観察メモ

ここ数年、どうしても雛(ヒナ)の巣立ちの実態を確認したい!……とスズメの観察を続けていますが、ついに、思いもよらず情けな〜い巣立ちの実態を目撃してしまいました。スズメに限ったことではなく、ムクドリやヒヨドリなど多くの小型の野鳥が同じように幼い状態で巣立ちをするそうです。

また、親鳥たちの献身的な子育てを見ていると、決して彼らからヒナを奪ってはならないと、つくづく思ってしまいます。ある意味で人間社会の縮図とも言えるすずめ一家の日常……働き者のすずめのお父さん、お母さん、すきをみては遊びながらも子育てを手伝うお兄ちゃん、お姉ちゃん、依存心の強い甘えん坊のヒナたち……そんな姿の中から、本当の保護のあり方が見えてくるかもしれないと思えてきました。


クラブの仲間のつばめの成長観察日記もお楽しみください>つ・ば・め〜る
近くヒヨドリ観察日記を公開予定! 乞う、ご期待♪

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すずめ一家は大忙し

春先、庭の芝生に椅子を出して読書など楽しんでいますと、たまに本の上、ひざの上や肩にポタリ、モゾモゾとブキミなモノが落ちてきて、悲鳴をあげることもたびたびです。見上げると頭上近くを、アオムシなどくわえた親鳥、若鳥があたかもツバメの群れのようにひっきりなしに行き来しています。私の庭にある巣の数は確認できただけでも十数個……我が家はご近所から“すずめ御殿(ごてん)”と呼ばれています。

親鳥は餌をくわえて巣に戻り、ヒナの糞をくわえて出てくると芝生の上に捨て、すぐに次の餌をさがしにいきます。日の出から日の入りまで、見張り番を残して、一家総出でこれが続きます。すずめの親は一日に四百回以上も巣に餌を運ぶそうですが、確認できた巣のヒナの数はどれも三羽。私が育てたすずめっ子の大食いぶりを思い出すと、うなずける数字です。

いつもなら雨が降ると木の枝や軒下で雨宿りをするすずめたちですが、子育ての時期には雨の中でも餌はこびを続けます。激しい雨が続くと、ちょっとでも小降りになるのを見計らって雨の中に飛び出します。土砂降りの中でも虫をくわえ、巣に向かうすずめを見かけます。明るくてヒナが起きているうちは、何時間も餌をあげないと死んでしまうのです。それはそれは大変で、愛情あふれた子育てです。

たまに親鳥が巣穴の中にもぐり込み、しばらく出てこないことがあります。巣の中でヒナの世話や巣の手入れなどしているのでしょう。時には巣材を運んできて、巣の補強をしています。私の庭のすずめの巣には、ハーブが好んで使われているようです。とくにレモングラスとタイム……すずめたちはこれらのハーブの防虫や防腐の効果を知っているのでしょうか?

子育て中のすずめの一家は大忙し。去年生まれた若鳥たちは子育てのお手伝いにかり出されるそうです。観察していると小ぶりなすずめが巣をのぞき込んで叱られていたり、アオムシを運ぶ途中でパンくずをつまみ食いしたり、たまにサボって数羽で遊んだりもしています。でも、この若鳥たちは、やがて巣立ったヒナたちの“すずめの学校”の先生になります。そうやってヒナの面倒を見ることで勉強して、若鳥たちも立派な大人のすずめになるのでしょうね。《2002年4月》

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野生児たちの受難

庭のコンクリート壁のL字型パイプの傍にあるちいさな水抜穴に、毎年すずめが巣を作ります。斜め下の穴にも新入りの入居者がいます。この穴は私の肩の高さくらいの場所なのに、大丈夫なんでしょうか……!?

これらの巣穴ではヒナたちが元気に育っていて、餌をくわえた親鳥が来ると、黄色いくちばしが大口開けて餌をねだるのが見えるようになりました。巣立ちも近いのだろうねと話していた翌朝、親鳥の様子が変です。餌をくわえたまま、何度も巣穴を出たり入ったり。いつものように双眼鏡でのぞいてみると、穴の中にヒナの姿がありません。親の知らない間に巣立ったのか……と、その時には思いました。

昼過ぎ、庭に出ると、巣から2〜3mの芝生の上にカラスにつつかれた痛ましいヒナの姿がありました。しかも二羽も。。。どちらも巣立ちができるほどに育っていました。巣立ちの失敗なのか、それとも昨夜のひどい雨で水抜穴から滑り落ちて、明け方に襲われたのか……原因はわかりません。残る一羽もずいぶん探しましたがみつからず、無事に巣立ったのだと思いたいところですが、不安です。そして、またもや別の巣で、裸ん坊のヒナが冷たくなっているのをみつけました。

雨の翌日の早朝には必ず見回りをするのに、朝から忙しくて見なかった今日に限ってどうして? 早くみつけていたら助かったのかどうかはわかりませんが、やはりとても悔やまれました。

ヒナたちをどこに埋めようかと考えながら立ちつくしていると、目の前にトビが舞い降りてきて、あっという間に一羽の死骸をさらっていきました。ショックで呆然となりましたが、落ち着いてから考えると、あれは何よりも自然な弔いだったのだろうとあきらめがつきました。ちいさな命一つ、なにかの役には立ったのだと。

親鳥たちはその後数日、ずっと空っぽの巣に餌を運びつづけ、運んではヒナの姿を探していました。《2002年4月》

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人も巻き込む巣作り合戦

巣の近くの木や柵(さく)の上には必ず数羽、見張り役のすずめがいます。人も含めて、猫などの危険が近付くとジジジジジッ、けたたましくさえずって知らせます。でも、協力して自分たちの巣を守るというおだやかなものではないようです。なぜなら、すずめ同士でにらみ合って警戒音を発していることがよくあるからです。たぶん、個体ごとにそれぞれの巣を守っているのでしょう。

テラスの日除けテントの周辺でも、毎日大騒動が繰り広げられています。テントの奥深くにも、すずめたちが団地のように巣を作るのですが、巣の間隔が近すぎるのか、親鳥が巣を間違えるのか、すずめ同士の争いが絶えません。まさにつかみ合いの喧嘩です。あまりに騒々しくて窓を開けると、目の前30cmのあたりに取っ組み合いもつれ合った二羽のすずめがドタッと落ちてきます。人間がそばにいることなどお構いましに、テラスの床の上で喧嘩を続けます。

自然の中でたくましく生きていくためには必要なことでしょうが、すずめの気性の荒さには驚かされることがあります。自分の巣、卵、ヒナを守るためには人をも恐れないということでしょうか?

だけど、悲しいことに、この巣作り合戦に、実は私も巻き込まれているのです。

ここ数年、テントの中には巣を作らせないように工夫しています。毎年、必ず裸ん坊のヒナが落ちる〈4年連続で落下〉上、卵やヒナをねらったヘビが家の中まで入り込んでしまうこともあるからです。しかも、今年は壁の塗り替えと、痛んだテラスに大きな穴まで空いて修理をする予定もあったからです。

まずはキラキラ光る鳥除けテープをテントに沿って取り付けました。ほんのしばらくは近寄りませんでしたが、テープはやがて巣材に取り込まれ・・・ヒナには危険なのではずしました。トンビのモビールやカラス風船も取り付けましたが、しばらくすると、その上で羽づくろいなどする始末。おどしてもおどしても、彼等は決してあきらめません。やむなく、巣を作りはじめたら払い落す、作りかける→落とす……とくり返しましたが、そんな私をしり目に、頭上ではめげないすずめたちが縄張り争いをしています。

そして今年もついに、連休に風邪で寝込んでいる間にヒナがかえってしまい、早くも巣の数は6? 7? 巻き取り式のテントは何年も使われることがないまま。予定していたテラスの改修工事はヒナたちが巣立つまで延期です。大工さんになんと言いましょう?《2002年5月》

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落ちた…!巣立った?

すずめの雛(ヒナ)の巣立ちを偶然にも目撃できた瞬間……その瞬間に私が思ったことは「落ちたーーー!」でした。以下は、私が育てたヒナたちの行動を元に私の推測をまじえた再現描写です。

巣立ち直後のヒナ元気に育って好奇心も旺盛なヒナたちは、巣の入り口近くで親鳥の姿を探したり、世間を眺めたりしています。おませな一羽はしきりに羽ばたきの練習をしています。ほかの二羽もそれを真似て、翼をばたばたしはじめます。翼を羽ばたかせることは彼等にとってとても心地よく、鳥の血が騒ぐのでしょう。一心不乱に練習をくり返し、時折、よたよたしながら身繕いもしています。巣立ちは間近です。

翌日も、餌を食べる合間はずっと羽ばたきの練習です。じきに羽ばたきの速度が上がってきます。狭い巣の中で三羽がばたばた。巣穴から巣材が飛び散ります。親鳥が妙にさわぐ中、やがて一羽が飛び降りました。いや、飛ばされたのでしょうか?残る二羽も続いて……落ちました。保護をするべきかどうか迷いましたが、親鳥がしきりに面倒をみていたので、私は傍観することにしました。

その後、二度の偶然に出会わなかったら、私はこのぶざまな光景がまさか巣立ちであったとは信じられなかったでしょう。あまりにも幼すぎるヒナたち、あまりにも無鉄砲な巣立ち。でも、他の二つの巣でもほぼ同じようにして、ヒナたちは落ちて、いえ、巣立っていったのです。

彼らは私が抱いていた「巣立ち」のイメージを見事に裏切ってくれました。これはまさに「落下」と形容すべきものです。人間の世界で言えば、お母さんの手を離れて初めて幼稚園で時を過ごすようなものかも……。こうしてヒナたちは飛ぶこともできないまま、危険な地上での訓練期間にはいるのです。《2002年5月》

*写真は管理人が一日保護した巣立ち直後のすずめのヒナ。くちばしはまだふっくらとやわらかく、両端はまっ黄色。尾羽は2cm程度と短く、お尻の辺りにもまだ羽毛がなく、翼を広げると地肌が見えています。

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ある巣の出来事

多くの野鳥たちは一日に一個の卵を産みます。卵は生まれた順番にふ化しますから、ひとつの巣の中で育つ兄弟たちの体の大きさにも差ができてきます。親鳥が餌(エサ)を運んでくると、早くふ化した身体の大きい子は後から生まれた小さい弟たちを押しのけて、よりたくさんの餌をもらうことができます。それに、親鳥たちはヒナの口の中の色に刺激されてエサをあたえたくなるそうですから、より大きく開いた口を目指してエサを突っ込んでしまうの仕方ないことです。野生の暮らしの中では、強くて元気な子でないと生きていけないからですね。

こうした理由から、あとからふ化した子たちの成長は遅れます。体が小さくて、餌にありつくチャンスも少なくなるからです。中には餌にありつけず、栄養障害が出てしまったり、弱って死んでしまう子もいます。強い者が生き残る世界、これこそが野生の世界です。
ある日、私はおかしな巣立ちを目撃しました。

一番最初にふ化して、より多くの餌を食べて元気に育った子は、もちろん一番乗りで巣を飛び出します。次に二番目に元気な子が巣立って・・・と思っていたのですが、じつは違いました。最初の子が飛び出す時の翼の力にあおられて一羽のヒナが巣からはみ出し、しばらくは巣にしがみつくようにもがいていましたが、あきらめたように巣立ち(落ち)ました。そして、さらに三番目の子は、自分もついついその気になったように、あたかも投身自殺のごとく・・・後を追いました。まだ小さなヒナたちは、ろくに飛べもしないのに、こうやって巣から離れるのかもしれません。

問題は四番目の子でした。この子は飛び出しそこねました。そして数日が過ぎて、親鳥や元気に飛べるようになった兄弟たちが何度も呼びに来るにもかかわらず、十日近くも巣を離れることができませんでした。

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巣立ちは運命の分かれ道

寄り添うヒナたちしばらくは広い世界におびえるのか、どのヒナもよたよたながらあっちへ、こっちへ走り回ります。やがて、草むらに逃げ込んだヒナは茂みに頭をつっ込んで、その場で固まっています。開けた芝生の上に落ちたヒナは、親鳥や若鳥が取り囲んで、叱ったりつついたりして、茂みの中へ誘導します。歩くことさえおぼつかないヒナがあっちへこっちへ、親鳥や若鳥も必死です。しばらくするとヒナたちは元気に鳴きはじめ、親鳥に餌をねだります。

ほとんどのヒナが草むらにかくれて、しきりに鳴きながら、親鳥の運ぶ餌を待ちながら、数日を過ごします。中にはエイヤッと飛び、運良く低い枝や垣根にとまったヒナもいましたが、親鳥がさわいだりつついたり、ヒナを草むらにもどします。こうして見晴らしの良い場所が危ないことを教えるのでしょう。

このような危うい時期に、自然界ではヒナのおよそ80%が死んでしまうそうです。そのほとんどは他の生きものの餌になります。でも、ヒナをねらう生きものを責めるわけにはいきません。彼らもまた子育て中であったり、その子供たちもまた別の生きものにねらわれているのですから。それが野生の姿なのです。すずめっ子たちだってアオムシたちを食べていますよね?

最近では、猫、ヘビ、モズ、カラス、トビなどの他にも、人による「誘拐」もヒナたちの将来を脅かしています。「誘拐」とは、人が巣立ち後のヒナを「巣から落ちたのだろう」「巣立ちに失敗したヒナだろう」とかん違いして、親元から連れ去ってしまうことです。多くの自然が破壊され、野鳥たちが人の近くで暮らすようになるにつれて「誘拐」は激増しています。これを読んでいる人は、お時間のある時にちょんの字の主張を読んでみてくださいね。《2002年5月》

*写真は野生のすずめのヒナたち。まだ上手に飛ぶことができないヒナたちは、親鳥がエサを探しに行っている間、身を寄せあって親鳥を待ちます。>写真提供:メビさん(雀の日記

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ヒナたちの甘い誘惑

私が庭の雑草をとっていてばったり出くわしたヒナは、逃げるどころか黄色いクチバシを大きく開けて、私に餌をねだりました。倉庫に迷い込んでいたヒナは、閉じ込められて腹ぺこだったのでしょう。私を見ると肩に飛んできて、これまた口を開けました。幼いヒナたちの行動範囲の中にすずめを育てている家などありません。となると、まだ“危険”というものを教えられていないヒナだったのでしょう。「お前みたいなのがいるから誘拐が増えるんだよぉ」とつぶやいてしまうほど、なんとも情けない野生初心者の姿です。

人がかん違いして救いの手を差し伸べてしまうほど、巣立ち直後のヒナたちは無防備です。ろくに歩けず、人を恐れず、な〜んにも知らないあどけない姿で人を見上げています。とくに鳥が好きな人でなくとも、思わず顔をゆるめて手を差し伸べてしまう姿です。

しかし、誘惑に負けてはいけません!親鳥たちは時に気長に、時にいらついた様子で(ホントです!)叱りながら、野生として生きていく上で必要なさまざまなことを教えているのでしょう。ヒナたちはしきりに親鳥を真似ています。この時期に人間に保護されてしまうと、すずめ同士でのコミュニケーションがとれず、危険を察知する判断力も育たず、将来的には子育てに参加できず、伴侶が持てないなど、いろんなハンデを負わすことになります。

しつけ中の親鳥を眺めていると、人間には保護したヒナを元気に育て上げることはできても、親鳥のように上手にこれらを教えることはできないなぁと、つくづく思い知らされます。ケガをしていたり、ぐったり弱っているのでなければ、ヒナにとっても親鳥にとっても、人の手助けは余計なお世話なのかも……。《2002年5月》

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アメニモマケズ・・・頑張る親子

親鳥にエサをもらうヒナ私の仕事机は庭に面しています。もちろん、空や海の様子や、野鳥たちの姿を楽しむためです。窓の向こうにはハーブと雑草で繁った庭があり、いろんな鳥がやってきて餌をついばんだり、砂浴びをしたりと楽しんでいます。私はにんまりこっそり、それを楽しみます。

そんなある日、親鳥たちがしきりにさわいでいるのをみつけました。双眼鏡で見てみると、茂みにもぐり込む羽毛ふわふわのヒナの姿がありました。

親鳥たちは餌を直接口に入れたり、地面に落としてそれを食べるように仕向けているように見えます。親鳥のいない間、ヒナはしきりに鳴いて親鳥を呼んだり、地面や葉っぱをつついてみたり、木の枝でクチバシを拭ったりしています。親鳥のいる時には草むらから出てきて、しきりに羽づくろいをしたり、羽ばたきの練習もしています。親鳥たちはしきりに辺りを警戒しています。

翌日は冷たい雨が降り、ヒナは草むらに隠れたままじっとしています。私は心配でそわそわ、気が気ではありません。でも、雨の中でも親はしきりに餌を運んでいます。心を鬼にして、見守りました。巣立ってからは寒さに耐えるのも大事な訓練のひとつで、羽根の内側の羽毛で体温を守ります。それに、野鳥たちの羽根は水を弾くようにできています。羽づくろいをしながら、体から分泌される油で羽根をコーティングするのです。ただし、濡れた羽根に人が触れると、人の手の油でヒナの羽根は水を通すようになるそうですから、中途半端な手出しはできません。

心配でまんじりともできないまま夜が明けました。ブラインドを開け、しばらくこわごわ見ているとヒナの元気な声が聞こえはじめ、私はほっと胸をなで下ろしました。やがて親鳥が餌を運んできて、何ごともなかったかのようにスズメたちの一日が始まりました。

私を睡眠不足にしたこのヒナは、三日目に草むらから連れ出され、ちょこちょこと小走りに親鳥についていって見えなくなりました。幼いヒナたちはこうして試練を重ね、雨や寒さに耐えて、天敵から身を守る方法を身につけ、初めてきびしい自然の中を生き抜いていくのだ……頭ではわかっていたつもりでしたが、初めて知ったような気がしました。これからも、よほどのケガなどがない限り手出しはせず、見守ることに徹しようと改めて心に誓いながら、このすずめっ子クラブを作った初心を新たに噛みしめるヒナとの出会いでした。《2002年5月》

*写真は野生のすずめの親子。ヒナたちは、やっぱりお父さん鳥やお母さん鳥といっしょにいる時が、一番幸せそうです。>写真提供:メビさん(雀の日記

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つづく……かも(^^;

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