子供の頃は夏休みの間中、田舎の祖母のところで毎日従兄弟達と“神様の木”で遊びました。裏山にある巨大な老木、いわゆる“御神木”です。
根元には小さなお地蔵さんが祀ってあって、遊ぶ前には手を合わせ、帰る時にはさよならを言いました。子供達なりに老木に憧れや畏れを抱いての事だったと思います。
幹に巻かれた太いしめ縄は足場になり、木に絡み付いた太い蔓がブランコやエレベーターになり、鳥の巣を覗いたり、卵を盗んだり・・・大人たちに叱られることもなく、日が暮れるまでターザンごっこやかくれんぼをして遊び呆けたものでした。祖母や母が子供の頃もそうやって“神様の木”で遊んでいたそうです。
数十年を経た今、庭造りをきっかけに私は改めて“木”と出会うことになりました。はじめは「何もないところから始めるのだから、木も苗から育てよう」という単純な発想でしたが、小さな苗木を植えてみると、その成長がとても楽しみになりました。どんな木に育つのだろう、何年たったら花や実をつけるのだろう、どのくらい大きくなるのだろうと思いを巡らせます。やがて苗木たちは成長し、この庭は林のようになるかもしれません。いつか様々な歓びや驚きを子供たちに与えてくれる木になるのかもしれません。きっと、あの“神様の木”のように。
右の写真の“すずらんの木”はこの「幼い木たちの庭」の主木にするつもりで植えたのですが、あまりにも成長が遅い……。片や上の写真の“一才さるすべり”は、綿の種のお礼にとわが家にやってきて、種から育てたものがあっという間に成長し、2003年には3mを軽く越えてこのコーナーの主たる貫禄まで出てきました。“すずらんの木”は“一才さるすべり”の根締めのようになっています。
予定は未定・・・ こんな突然の番狂わせもまた、庭守の楽しみのひとつです。シロウト庭師にとっては、デザインは常に変わるもの。植物任せの庭造りも、これまたとっても楽しいものです。
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