■死ぬかと思った ■罠にはまった ■胸にこたえた ■腹がよじれた ■寝るかと思った

篠田節子の書庫


ベストセラー

一風変わった着想といつも挑戦的な姿勢に並々ならぬパワーを感じる。篠田節子氏の頭の中はどうなっているのだろう……と興味津々。魑魅魍魎は出てきませんが、それよりもっと怖いものが潜んでいます。

涙を飲んで選ぶオススメの一冊
女たちのジハード

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  38階の黄泉の国
遥かな想い出の彼方にある甘美な恋の至福の時を取り戻せたと思った死の世界で、頂点を極めたあとには妙に生々しい現実感と嫌悪感が残った。かつての恋人と共に行き場のない永遠の地獄に捕らえられた主人公の心理を幻想的な筆致で描いている。短編集『短編復活』、篠田節子短編集『愛逢い月』に収められた短編。
 

篠田節子 ハルモニア(真の音)
初版1.Jan.'98/マガジンハウス
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精神に重度の障害を抱えながら、ある特定分野でのみ驚異の能力を発揮する人たちがいる。ヒロイン由希も生まれながらの自閉的障害と絶対音階、言わば至上の音感の持ち主だった。自らの音楽的才能の限界に絶望していたチェリスト東野は由希の比類なき才能に愕然とし、やがてすべてを賭けて由希にハルモニア(至上の音楽)を掴みとらせようとする。それが由希の中に潜んだ別の能力を呼び覚ますことになり、それが自らの破滅に繋がるとも知らずに。。。
持てる者と持たざる者。人としてのすべての感情の代わりに天賦の才を与えられた由希と、健全な身体と心を持ちながらも才能の限界にもがき苦しんだ東野・・・由希は幸せだったのだろうか?由希を守ろうとした東野は、果たして幸せだったのだろうか?と読後しばし悩んだ。平凡を楽しめる心も、案外大事なのかもしれない。

篠田節子 女たちのジハード(聖戦)
初版30.Jan.'97/集英社/第117回直木賞受賞
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保険会社に勤める5人のOL。年令も性格も嗜好も生きざまもそれぞれに違い、社内でなんとなく近い存在といった彼女たちだが、年令、社内での立場、結婚と共通の悩みや話題を通してだんだんと一致団結していく。そして始まる彼女たちのジハード(聖戦)。痛快な女たちの生きざまにいつしか我が身を重ね、大いに笑った。オールドミスもぶりっ子ものろまな子も、ここまでくると素敵。なんとも愉快、爽快で楽しい疑似体験。必ず元気が出るこの一冊、頑張る女性たちは絶対に読むべし!

篠田節子 ゴサインタン(神の座)
初版25.Sep.'96/双葉社/第10回山本周五郎賞受賞
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平凡な有力農家にネパールから嫁いできた妻のもとに、だんだん人が集まるようになる。そして、時折神憑かり的な様子を見せる妻を中心とした新興宗教ができあがっていく。地元の住民に変人扱いされ、土地を売り、家を失い、全て失った男はそれでも妻の傍を離れず、やがて二人は妻の故郷、ネパールへと旅立つ。
家系、血筋、財産、誇り、欺瞞、家族、愛、歓び、思い出、弱さ、欲、人の生活、宗教、と全てを含めた“家”というものの存在と人間との関わりを改めて考えさせられた。なんとも不思議なストーリー。

篠田節子 夏の災厄
初版25.Mar.'95/毎日新聞社
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夏、風邪に似た症状から熱にうなされ、痙攣を起こしながらあっという間に死んでいく患者が続出し始めた。「悪性の風邪だ」「いや、なにかおかしい」「日本脳炎だ!」「そんな、まさか今どき?」・・・
埼玉県昭川市で、突如として日本脳炎が発生した。 後手後手に回る行政の処置、病院への連絡の不行届き、ワクチンの不足、人員の不足。そんな中で「なんでオレが……」と走り回る保険所職員、睡眠不足のパートの看護婦たち、現代医療に不信を抱く巷の開業医が、嫌だ嫌だと言いながらも必死に頑張る。小説の中に頼もしいヒーローやヒロインがいないと、不安で心配で、怖さが倍増!? 地味だが、スリル満点!お勧めの一冊。

篠田節子 聖 域
初版20.Apr.'94/講談社
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一人の文芸編集者が偶然見つけた未完の原稿“聖域”・・・長年の編集者としての直勘が「この小説を完成させるのだ」と告げる。原稿の著者、失踪した女流作家を追い求めるうち、編集者はついに「聖域」の舞台である東北へ辿りつく。そして、彼の人生はがらりと変わることになる。
未完の本に翻弄される人生。なんとしても本を完成させて自分の生涯の仕事にしたい!と願う編集者の妄念に鳥肌が立つ。が……、かつて半村良の幻の続編と言われた本を十数年待ち続けた私には、なんだか少しはわかる気もする。。


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